JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG28] 原子力と地球惑星科学

コンビーナ:笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、幡谷 竜太(一般財団法人 電力中央研究所)、竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)

[HCG28-P08] 深度300mボーリング横坑周辺岩盤の水理地質構造

*濱田 藍1 (1.一般財団法人 電力中央研究所)

キーワード:地層処分、水理地質構造、水みち割れ目、土岐花崗岩、瑞浪超深地層研究所、高レベル放射性廃棄物

高レベル放射性廃棄物の地層処分においては,地下水が物質移行の主要な媒体となり,岩盤中の割れ目内を流動する。その過程で、放射性核種は割れ目周辺の岩石マトリクス中の微細な間隙へ長い時間をかけて拡散・収着し、その移行は遅延すると考えられている。岩盤が構造運動や熱水変質を被ると、岩石組織の破砕や2次鉱物の生成により間隙構造は変化し、地下水の流れや物質移行に影響する。よって花崗岩などの結晶質岩中の水の流れと物質移行を把握するためには,割れ目の水理・地質学的な連続性とその周辺マトリクスにおける間隙特性を明らかにし,両者の分布と構造を理解することが重要である。電力中央研究所では、(国研)日本原子力研究開発機構の瑞浪超深地層研究所に分布する土岐花崗岩を対象とした水みち割れ目の調査手法の高度化に取り組むため、これまで深度300mボーリング横坑の西側岩盤に向けて8本、東側岩盤に向けて3本のボーリングを掘削し、各方向の岩盤で孔間において水みちとなっている割れ目の分布とその周辺マトリクスの微細間隙構造を調査してきた。以下に、これまでの調査で分かった深度300mボーリング横坑周辺の割れ目とその周辺マトリクスの特徴についてまとめる。
【深度300mボーリング横坑周辺の割れ目の方向】
西側岩盤および東側岩盤に共通して分布する割れ目は3つあり、NW走向高角度傾斜割れ目(NW系割れ目)、NE走向高角度傾斜割れ目(NE系割れ目)および低角度傾斜の割れ目(低傾斜割れ目)である。
【西側岩盤の水みち割れ目の特徴とその分布】
主要な水みち割れ目はNW系割れ目であり、その特徴は2つあった。1つはマトリクスが強変質を被り閃亜鉛鉱や緑簾石を含有し、開口部ではしばしば自形の方解石結晶が見られるものである。もう一つはマトリクスが弱変質を被りカタクラスティックな脈状組織と平行に割れ目が開口しており、割れ目充填鉱物の少ないものである。前者はかつて鉱化作用を受けたのち晶洞が水みちとなっている可能性がある。後者は,破砕作用により造岩鉱物が細粒化し、その後の構造運動により,カタクラスティックな組織の面が弱線となって破壊し形成したと考えられる.両者はそれぞれ孔間にわたり水理的・地質学的に連続し、かつ両者間で水理的圧力応答が認められた。これには低傾斜割れ目が介在することが原位置レジン注入試験などから想定された。ここで計測された透水量係数はともに10-7-10-5m2/sと周辺岩盤より大きい値であった。なお、西側岩盤におけるNE系割れ目は、マトリクスが変質を被りセリサイトや緑泥石、スメクタイトなどの充填鉱物を産し、透水性は乏しい。
【東側岩盤の水みち割れ目の特徴とその分布】
東側は西側と比較して全体的に割れ目の本数が多い傾向にあり、なかでも低傾斜の割れ目が西側よりも多い。特に北東の領域では割れ目密度が高く、割れ目には方解石やスメクタイトなどの充填鉱物が認められマトリクスは変質を被る。これは主立坑断層の形成に伴うダメージゾーン(鶴田ほか、2012)に近く、断層沿いの変質の影響も受けているためと解釈される。水みち割れ目はNW系割れ目、NE系割れ目および低傾斜割れ目であるが、孔間でそれらの地質学的特徴が顕著に連続することはなかった。このうち、低傾斜割れ目はコア試料において割れ目面のかみ合わせが悪く、針状もしくは板状の方解石の自形結晶が分布する晶洞が認められる。東側岩盤の3孔における水圧応答は、湧水量の多い区間に限らず、広範囲に分散して応答する傾向があった。ここで計測された透水量係数は10-8-10-5m2/sと周辺岩盤より大きい値であった。
以上より、深度300mボーリング横坑周辺岩盤は、西側では連続性のよい複数のNW系割れ目が低傾斜割れ目を介し透水性の高い割れ目帯となって水みちを形成している。一方東側では各孔の湧水量の多かった水みち割れ目の間を多数の低傾斜割れ目が交差することで、ネットワーク状に水みちを形成している可能性がある。そのほか本稿では、水みち割れ目周辺マトリクスにおける拡散・収着の挙動についても試験を行ったので、その結果についても報告する予定である。
本研究の内容は、経済産業省資源エネルギー庁より(一財)電力中央研究所が受託した「平成31年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(岩盤中地下水流動評価技術高度化開発)」の成果の一部である。また、(国研)日本原子力研究開発機構との共同研究の一部として実施した。