JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG29] 原子力災害被災地の地域復興における科学者の役割

コンビーナ:西村 拓(東京大学大学院農学生命科学研究科生物・環境工学専攻)、溝口 勝(東京大学大学院農学生命科学研究科)、登尾 浩助(Meiji University)

[HCG29-05] 山木屋地区における渓流から河川への土砂流出とセシウム動態に対する観測データを用いた除染の影響

*牧野 史明1恩田 裕一3谷口 圭輔2Mitbaa Slim4脇山 義史5加藤 弘亮3 (1.筑波大学、2.福島県環境創造センター、3.筑波大学アイソトープ環境動態研究センター、4.森林研究・整備機構、5.福島県環境放射能研究所)

キーワード:GIS、、除染、137Cs

福島第一原子力発電所の事故により放射性物質が多量に空気中へ拡散された。空気中に拡散された放射性物質は約80%が海洋へ、残りは陸域へ降下したと推定されている。特に137Csは半減期が長く環境に与える影響が大きい。そのため、環境中の137Cs動態を解明することが重要となってくる。放射性物質が沈着した地域では除染作業が行われてきた。除染により空間線量率の低下が期待される一方で、表土の剥ぎ取りや客土などのかく乱により土地被覆の変化により土壌浸食が起こりやすい状態となっている。また、除染の場所より土砂流出や137Cs動態の研究はあまり多くない。そのため、上流の源流域での除染が河川の土砂流出にどのように影響するかはわかっていない。

本研究の対象地域である福島県伊達郡川俣町山木屋地区では2013年から除染が行われ2016年春には除染が終わった。さらに、2017年に除染作業が終わり住民の帰還が行われており、農地の原状復帰を行い、耕作を再開している地域もある。そのため、除染による土砂流出とは異なる人間活動に伴う土砂流出が起こっている。

本研究では除染による土砂動態の変化及びCs動態との関係と住民の帰還のよる土砂動態の変化の解明を目的として、口太川中流、森林域の疣石山での観測および過去のデータの解析を行った。口太川中流地点で2014年、疣石山では2013年から浮遊土砂137Cs濃度、水流出量、浮遊土砂流出量の観測を行っている。LQ曲線、137Cs濃度の変化から源流域の除染に影響としては、137Cs濃度が2014年、2015年を境に急激に減少していることがわかった。また、除染により河川中の土砂流出量も増加したがその後は減少していることがわかった。さらに、源流域、河川のデータを比較することで源流域の除染の影響が一年程度遅れて河川に現れることが明らかとなった。また、住民帰還の影響により土砂流出が増加傾向にあることが示唆された。