JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG33] 災害リスク統合研究の充実

コンビーナ:木村 圭司(奈良大学文学部地理学科)

[HCG33-P02] 気象シミュレーションWRFによる土壌水分予測を用いたインドネシアの原野火災危険度予測

*木村 圭司1高埜 夏月4大崎 満2Sulaiman Albertus3Awal Pribadi3 (1.奈良大学文学部地理学科、2.北海道大学農学研究院、3.インドネシア科学技術評価応用庁、4.理想科学工業(奈良大学卒))

キーワード:原野火災、インドネシア、気象シミュレーションWRF

インドネシアでは、エルニーニョ年に降雨が少なくなり、その結果として原野火災が増えると言われている。インドネシアには熱帯泥炭地が多く分布しており、地下水位が15cmより深くなった場合に、泥炭地での原野火災が一気に増えるとされている。カリマンタン島中南部のパランカラヤ市周辺では、1995年から1999年にかけて泥炭地約150万haを水田として開発する計画が進められたが、結果として失敗に終わった。開発されかけた土地は農耕不適地として残された。地下水位を低くするために作られた水路は、現在も排水が続いており、泥炭地の乾燥化が進んでいる。
本研究では、気象シミュレーションWRFを使用して5日程度の地下水位を予測することを目標として、そのシステム構築を行う。研究対象地域はパランカラヤ市郊外にBPPTが設置した地下水位観測点を中心とした地域であり、シミュレーション構築には2015年8月と2017年2月のデータを、シミュレーションの応用として2017年8月のデータを使用した。気象シミュレーションWRFは、NCEPのNCLデータを境界値とし、メッシュサイズ27km, 9km, 3km, 1kmの4ドメイン、各31×31メッシュで計算を行い、地下4層の土壌水分量を計算した。そして、対象日の地下水位との相関式を作成し、予測に使うこととした。
2015年8月の計算結果は、
y=0.5877x1-1.9520x2+25.6019x3+181.4307x4-54.4165 式①
ただし、yは地下水位(cm)、x1~x4はWRFによる1~4層目の土壌水分量
として表すことができた。この式を用いると、絶対係数は0.9639と非常に良い相関で予測できることがわかった。
同様に、2017年2月の計算結果は、
y=0.082993x1+25.97913x4-7.90892 式②
ただし、yは地下水位(cm)、x1,x4はWRFによる1,4層目の土壌水分量
として表すことができた。この式を用いると、絶対係数は0.9267と、やはり非常に良い相関で予測できることがわかった。
さて、式①と式②を比較すると、式の形・係数が全く異なる。このため、シミュレーション式の一般性を検証するために、以下の三つの計算を行った。すなわち、式①を2017年2月のデータに当てはめること、式②を2015年8月に当てはめること、そして良識を2017年8月のデータに当てはめることである。その結果、どの場合も相関は低く、予測には使えないことがわかった。
結果として、本研究対象地点の地下水位の予測を行うためには、年月を一般化した式を作成することはできず、短期間ごとに予測式を作って当てはめなければならないことがわかった。しかし、こうやって短期間の予測式を作れば、絶対計数が0.9を超える、ほぼ確実に予測できる式が立てられることがわかった。
これまで、対象とした地点は1地点、期間は3ヶ月しか計算していないが、今後、対象地点を増やすことと、期間を長くすること、を行うことにより、予測式の係数に見られる特徴が明らかにされると考えられる。