JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG35] 圏外環境における閉鎖生態系と生物システムおよびその応用

コンビーナ:篠原 正典(帝京科学大学)、富田ー横谷 香織(筑波大学生命環境系)、加藤 浩(三重大学 地域イノベーション推進機構 先端科学研究支援センター 植物機能ゲノミクス部門)

[HCG35-P03] 陸棲藍藻 Nostoc sp. HK-01 の乾燥過程で特異的に見出される高分子物質(群)―タンパク質の解析―

*田中 博子1永嶺 海夕1安部 智子1木村 駿太2加藤 浩3富田ー横谷 香織4 (1.東京電機大学理工学部、2.東京大学大学院農学生命科学研究科、3.三重大学地域イノベーション推進機構、4.筑波大学生命環境系)

キーワード:シアノバクテリア、乾燥耐性、ストレスタンパク質

陸棲藍藻 Nostoc sp. HK-01 は、兵庫県の土壌で採取された Nostoc commune の藻塊から、乾燥耐性を指標に単離された株である1)。藻塊は乾燥後に数年経た後でも、液体培養で蘇生して乾燥前と同様の増殖を示すことが確認されている2)。また、乾燥藻塊は100ºCを超える高温に対して耐性を示すことも報告3)されているが、この耐性を示す細胞は、アキネートと呼ばれる休眠細胞のみであることが示されている3,4)。乾燥状態での藻体の高熱耐性が示されている一方で、湿潤状態から乾燥状態に移行する過程での熱環境耐性や関連する物質群の詳細はまだ明らかにされていない。本菌株は有人宇宙活動における食資源としての利用も期待されており2)、そのために、乾燥耐性獲得に関与する遺伝子群や代謝の情報を得る必要がある。本発表では、Nostoc sp. HK-01 株が乾燥耐性を得る過程に関与する物質のうち、特に高分子物質(群)を見出すことを目的として細胞内外のタンパク質を調べた結果について報告する。
 湿潤状態の藻体を、高温環境下で急速に乾燥させた場合とデシケーター内で緩慢乾燥させた場合では、その後の細胞蘇生率に相違が認められ、緩慢乾燥の場合の方が蘇生率は高かった。この蘇生率の相違は、乾燥過程で得られる乾燥耐性機構が関与していると考えられた。デシケーター内で徐々に藻体を乾燥させ、乾燥していく過程の藻体を経時的に採取してSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。その結果、乾燥過程で経時的に存在量が増減する複数のタンパク質の存在を確認した。これらのタンパク質を同定し、現在その解析を進めている。これらの乾燥耐性に関与する可能性のある高分子物質(タンパク質)に関する情報は、本菌株の閉鎖生態系における食資源利用のための有益な情報となることが期待される。

参考文献:
1. Katoh, H. et al., Microbes Environ 18, 82-88, 2003.
2. Kimura, Y., Tomita-Yokotani, K. et al., Biol. Sci. Space 29, 24-31, 2015.
3. Kimura, S. Tomita-Yokotani, K. et al., Biol. Sci. Space 29, 12-18, 2015.
4. Kimura, S. Tomita-Yokotani, K. et al., Am. J. Plant Sci. 8, 2695-2711, 2017.