JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS08] 津波とその予測

コンビーナ:対馬 弘晃(気象庁気象研究所)、久保田 達矢(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

[HDS08-18] 植生の被覆度による土砂流出量への影響に関する実験的検討

*山本 阿子1金丸 祐樹2松永 龍之助3南野 貴之3多田 毅2福谷 陽3鴫原 良典2 (1.国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所、2.防衛大学校、3.関東学院大学)

キーワード:植生被覆、水理実験、津波

津波襲来時,海岸防災林は水位および流速の低減や土砂の捕捉などの防災効果を発揮する.

2011年の東北地方の震災以降,生育基盤盛土上への復旧林造成が進められ,深い根系が必要なため,盛土はかき起こしを実施して軟らかく造成した.しかし,軟らかい盛土が津波襲来時に堅固に維持されるか.洗掘などによる流木発生の危険性はないかなどの課題が残されている.軟らかくかつ洗掘を防ぐために表面の対策が有効である.表面の対策の一つとして植生による被覆が挙げられる.しかしながら,植生の被覆度による土砂移動量への影響を評価する手法はない.


本研究では,植生被覆による土砂の移動量への影響を明らかにするため水理実験を行なった.各地点において水理データを採取する固定床実験と植生被覆による土砂の移動量を測定する移動床実験を実施した.実験には二次元造波水槽を使用し,上流から貯水タンク,全長30mの水路,排水タンクで構成されている.水路上流側の貯水タンクに水を溜めゲートを急開することで,津波を模した段波を発生させた.水路下流側には,斜面・砂床区間・水平区間を設置した.砂床区間には砂(d50=0.287 mm)と植生(野芝)を設置し,植生の被覆度は0%(砂のみ),30%,50%,100%で実施した.また,被覆度30%と50%においては砂床区間内で配置を変化させた.土砂は水平区間の下流側でプランクトンネットにより捕捉し,水平部に堆積した砂と共に乾燥重量を測定した.その結果,被覆度の増加とともに土砂の移動量が減少することが明らかになった.被覆度だけでなく被覆した植生による捕捉効果も確認できた.しかしながら,被覆度が30%および50%のケースにおいて,砂床区間の上流側に設置したケースでは,下流側に設置したケースよりも多くの土砂が移動した.また,下流側に設置したケースと比較して砂床区間が大きく洗掘されることも確認できた.このことから被覆度だけでなく配置によっても影響を受けることが明らかになった.