[HDS08-P04] 南海トラフの確率論的津波ハザード評価:重み配分とハザード評価結果について
キーワード:津波、確率論的津波ハザード評価、南海トラフ
地震調査委員会(2020a)は、南海トラフの長期評価(2013、2020b)に基づいて、南海トラフの確率論的津波ハザード評価を公表した。防災科学技術研究所は、地震調査委員会(2020a)の評価方法・考え方を踏襲したうえで、さらに地震調査委員会(2020a)が評価対象から除外した最大クラスの地震等も考慮し、南海トラフ沿いの大地震に伴う津波の確率論的評価を試算した(平田・他、本大会)。本発表では、地震調査委員会(2020a)及び防災科学技術研究所による南海トラフの確率論的津波ハザード評価の重み配分についての説明と、両ハザード評価結果の違いについて報告する。
南海トラフの地震発生領域は、トラフ軸方向に6つ、プレート沈み込み方向に浅部、中部、深部の3つの計18領域に区分されている(地震調査委員会, 2013)。地震調査委員会(2020a)による南海トラフのハザード評価では、南海トラフで発生するプレート間地震として18個の領域の組合せによって79種類の震源域を設定し、それぞれにすべり分布の異なる特性化波源断層モデルを構築した。今後30年以内に発生する南海トラフの地震の発生パターンとして、これらの震源域の組合せにより176通りの震源域パターンを構築し、各震源域パターンに対して過去の南海トラフの地震活動の知見を踏まえて重み(相対的発生確率)を配分した。まず、東海地域と南海地域の少なくとも2地域が独立の地震として破壊する震源域パターンをグループIの地震群、東海地域と南海地域が同時に破壊する震源域パターンをグループIIの地震群と定義し、グループIとグループIIの地震群の重み配分を2:1と設定した。次に東海地域の2セグメント及び南海地域の2セグメントがそれぞれ同時に破壊する場合と別れて破壊する場合に分け、重み配分を4:1と設定した。震源域のプレート沈み込み方向の広がりについては、浅部・中部・深部の3つの領域全てが壊れる場合は考慮せず、中部のみが壊れる震源域パターンとその他の震源域パターンに分けて、重み配分を4:1と設定した。
本研究では、地震調査委員会(2020a)が構築した震源域群や波源断層モデル群等に加え、震源域のプレート沈み込み方向に全ての領域が壊れる最大クラスの地震をグループIIIの地震群として考慮するとともに、断層上端がトラフ軸に達している震源域には超大すべり域を持つ特性化波源断層モデルを考慮して、83種類の震源域と180通りの震源域パターンを構築し(鬼頭・他、本大会)、確率論的津波ハザード評価を実施した。最大クラスの地震に対応するグループIIIの地震群に対する重み配分に関しては、「全国地震動予測地図2014年版」(地震調査委員会、2013)の考え方を採用し、グループI+グループIIの地震群に対するグループIIIの地震群の重みを20:1と設定した。
最大クラスの地震等を考慮することにより、確率論的な最大水位上昇量の値は全体的に大きくなったが、特に低確率の最大水位上昇量が顕著に上昇した。例えば、30年超過確率3%の確率論的な最大水位上昇量分布は、最大クラスの地震等を除外した場合に比べて、九州から房総半島の太平洋沿岸で平均約0.3m、最大で約2.3m上昇したが、30年超過確率0.3%では平均約0.8m、最大で約9.1m上昇した。千年に1回程度やそれ以下の低頻度の津波を評価する場合には、最大クラスの地震等を考慮することで評価結果が大きく変わることが分かる。ただし、最大クラスの地震については過去に発生したことを示す明確な資料が乏しく、グループIIIへの重み配分の科学的根拠は弱い。そのため、本研究ではグループIIIへの重み配分を変えたパラメータスタディを行い、重み配分の設定がハザード評価結果に大きく影響を及ぼすことを調べた。
本研究は防災科学技術研究所の研究プロジェクト「ハザード・リスク評価に関する研究」の一環として実施した。
南海トラフの地震発生領域は、トラフ軸方向に6つ、プレート沈み込み方向に浅部、中部、深部の3つの計18領域に区分されている(地震調査委員会, 2013)。地震調査委員会(2020a)による南海トラフのハザード評価では、南海トラフで発生するプレート間地震として18個の領域の組合せによって79種類の震源域を設定し、それぞれにすべり分布の異なる特性化波源断層モデルを構築した。今後30年以内に発生する南海トラフの地震の発生パターンとして、これらの震源域の組合せにより176通りの震源域パターンを構築し、各震源域パターンに対して過去の南海トラフの地震活動の知見を踏まえて重み(相対的発生確率)を配分した。まず、東海地域と南海地域の少なくとも2地域が独立の地震として破壊する震源域パターンをグループIの地震群、東海地域と南海地域が同時に破壊する震源域パターンをグループIIの地震群と定義し、グループIとグループIIの地震群の重み配分を2:1と設定した。次に東海地域の2セグメント及び南海地域の2セグメントがそれぞれ同時に破壊する場合と別れて破壊する場合に分け、重み配分を4:1と設定した。震源域のプレート沈み込み方向の広がりについては、浅部・中部・深部の3つの領域全てが壊れる場合は考慮せず、中部のみが壊れる震源域パターンとその他の震源域パターンに分けて、重み配分を4:1と設定した。
本研究では、地震調査委員会(2020a)が構築した震源域群や波源断層モデル群等に加え、震源域のプレート沈み込み方向に全ての領域が壊れる最大クラスの地震をグループIIIの地震群として考慮するとともに、断層上端がトラフ軸に達している震源域には超大すべり域を持つ特性化波源断層モデルを考慮して、83種類の震源域と180通りの震源域パターンを構築し(鬼頭・他、本大会)、確率論的津波ハザード評価を実施した。最大クラスの地震に対応するグループIIIの地震群に対する重み配分に関しては、「全国地震動予測地図2014年版」(地震調査委員会、2013)の考え方を採用し、グループI+グループIIの地震群に対するグループIIIの地震群の重みを20:1と設定した。
最大クラスの地震等を考慮することにより、確率論的な最大水位上昇量の値は全体的に大きくなったが、特に低確率の最大水位上昇量が顕著に上昇した。例えば、30年超過確率3%の確率論的な最大水位上昇量分布は、最大クラスの地震等を除外した場合に比べて、九州から房総半島の太平洋沿岸で平均約0.3m、最大で約2.3m上昇したが、30年超過確率0.3%では平均約0.8m、最大で約9.1m上昇した。千年に1回程度やそれ以下の低頻度の津波を評価する場合には、最大クラスの地震等を考慮することで評価結果が大きく変わることが分かる。ただし、最大クラスの地震については過去に発生したことを示す明確な資料が乏しく、グループIIIへの重み配分の科学的根拠は弱い。そのため、本研究ではグループIIIへの重み配分を変えたパラメータスタディを行い、重み配分の設定がハザード評価結果に大きく影響を及ぼすことを調べた。
本研究は防災科学技術研究所の研究プロジェクト「ハザード・リスク評価に関する研究」の一環として実施した。