JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS08] 津波とその予測

コンビーナ:対馬 弘晃(気象庁気象研究所)、久保田 達矢(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

[HDS08-P08] 1998年パプアニューギニア津波を発生させた海底地すべりの方向

*勝間田 明男1吉田 康宏2中田 健嗣1藤田 健一3田中 昌之1溜渕 功史1西宮 隆仁1小林 昭夫1 (1.気象庁気象研究所、2.気象庁気象大学校、3.国土地理院)

キーワード:1998年パプアニューギニア津波、海底地すべり津波、地すべりにより地震波

1998年7月17日に、Mw7.0の地震の約20分後にパプアニューギニアの海岸が高い津波に襲われた。地震断層による津波にしては、襲来の時刻が遅すぎること・高さが高すぎることから、津波の原因は地震発生の13分後に発生した海底地すべりであったとされている。この海底地すべりからである可能性のある長周期(帯域:50-100s)の地震波をJAY観測点(震央距離約150㎞)とPMG観測点(震央距離約920km)において見つけた。他の観測点の地震波形も確認したが、他の観測点では該当の相を確認できなかった。

JAYとPMG観測点における地震記録の理論波形をTakeo (1985)の方法を用いて合成を試みた。波形を合わせるため、様々な方位の力や様々な継続時間などを仮定して、観測波形との相関を調べた。JAY観測点の記録について地震波形に合うように海底地すべりの開始時刻を設定すると、地すべり発生は地震発生の12分29s後と推定された。図に観測波形と理論波形の比較を示す。力の大きさは観測波形と理論波形の最大振幅が合うようにして求めた。推定された力の大きさは 2~6 X1012 Nであり、海底地すべりの継続時間としては約40秒とみられる。ここで求めた力の大きさは、津波シミュレーションにおいて仮定されている値とほぼ同じオーダーの値である。津波シミュレーションによって推定されていた海底地すべりの規模が地震波形からも確認されたこととなる。6X1012 N という力はKanamori and Given (1982)によって、1980年のセントヘレンズ山噴火による岩屑なだれに関係する力として求められた値(1013N)に匹敵するものである。海底調査において発見された比較的あたらしい崖地形の位置から、これまでの津波シミュレーションの多くの場合に北向きの海底地すべりが仮定されてきた。地震波形との比較においては、海底地すべりに関わる力の方向を南東方向(JAY, N72E; PMG, N55E)と仮定すると、観測に整合的な結果となった。南東方向は海底地形の傾斜方向と整合的である。

謝辞
東京大学地震研究所及びIRISにおいて保存されていた地震記録を用いた。