JpGU-AGU Joint Meeting 2020

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[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS08] 津波とその予測

コンビーナ:対馬 弘晃(気象庁気象研究所)、久保田 達矢(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

[HDS08-P14] 日本海溝におけるアウターライズ地震津波の数値計算

*馬場 俊孝1近貞 直孝2中村 恭之3藤江 剛3尾鼻 浩一郎3三浦 誠一3小平 秀一3 (1.徳島大学大学院社会産業理工学研究部、2.防災科学技術研究所、3.海洋研究開発機構)

キーワード:津波、アウターライズ地震、日本海溝

巨大な海溝型地震が発生すると,海溝軸より海側でプレートのベンディングにともなうアウターライズ地震がしばしば発生する.しかし,2011年東北地方太平洋沖地震の対となるM8クラスのアウターライズ地震は未だ発生しておらず,その発生が予想されている.これまでに我々は詳細海底地形調査,海底自然地震観測,地殻構造探査を実施し,北緯36.5度から40.5度の海溝軸付近の33本のアウターライズ地震の想定断層をマッピングした.本研究では数値シミュレーションを用いて,これらアウターライズ断層によって引き起こされる津波を予測した.また,実際の地震は想定断層の断層パラメタと完全に一致するわけではないので,断層傾斜などを変化させた計算も実施し,予測のばらつきも評価した.
33本のアウターライズ断層は,海底地形の凹凸から確認される断層端点を結んで,それぞれ1枚の矩形断層で近似した.これにより断層長(L)と走向は定義される.断層の上端深さは全て海底下0.1km,傾斜は60°,すべり角は270°とした.アウターライズ地震のスケーリング則(Álvarez-Gómez et al., 2012)を使って,全断層長(L)からMwをもとめた.断層幅(W)は地震発生層の下端に達するまでは L=W で与えることとしたが,地震発生層(厚さ40km)の下端に達した場合はそこまでとした.すべり量は断層面積とMwから求めた.半無限均質弾性体媒質を仮定して地殻変動を計算し(Okada, 1985),斜面の水平移動による津波励起の効果(Tanioka and Satake, 1996)と,水理フィルタ(Kajiura, 1963)を考慮した上で津波の初期水位分布とした.津波計算は非線形浅水波式を差分法で解くことによって行った.計算に用いた地形データの空間分解能は単一18秒格子で,ネスティングは利用しなかった.津波計算の結果,最も大きな断層(長さ332km, Mw 8.66)では,海岸での津波高は最大で27mに達した.
次に断層パラメタにばらつきを持たせた解析を実施した.地殻構造探査等から示されているように,アウターライズ地震断層の傾斜は45度から75度の範囲で変化している.そこで,傾斜を45度にしたものと,75度にした断層パラメタを準備し,上と同じ方法で計算した.また,断層の上半分を傾斜75度,下半分を45度にした複合断層モデルも扱った.すべり角も±15度のモデルで津波を計算した.さらに,1枚の矩形断層ではなく,60km程度の小断層でモデル化した場合や,断層スケーリング則を変更した場合,津波の伝播に分散性を与えた場合の計算も実施した.走向は海底地形情報から固定できるので,ばらつき評価の対象としなかった.その結果,異なる断層スケーリング則を利用した場合の影響が最も大きく,33断層の平均で約50%も最大津波高が変化した.断層の傾斜を変化させた場合は5~10%,分散を考慮した場合は約5%,すべり角を変化させた場合は約2%,小断層に区分した場合は約1%,海岸での津波高が変化した.
本研究はJSPS科研費15H05718,19H02409の助成を受けたものです.記して感謝いたします.