JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS11] Subaqueous Landslides and Their Anthropogenic Impact for Coastal Regions

コンビーナ:北村 有迅(鹿児島大学大学院理工学研究科地球環境科学専攻)、川村 喜一郎(山口大学)

[HDS11-P03] 堆積層境界の固結度が海底地すべりにおける水膜形成に及ぼす影響

*川北 章悟1朝比奈 大輔2竹村 貴人3細野 日向子3北嶋 圭二4 (1.日本大学大学院理工学研究科、2.産業技術総合研究所、3.日本大学文理学部、4.日本大学理工学部)

キーワード:海底地すべり、水膜、側方流動、固結度

近年,海底地すべりの発生が様々な海域で報告されている。海底地すべりは,陸上の地すべりに比べ,規模が大きく,その移動距離も大きいことから大規模災害の要因になり得る。しかし,海底という環境で起こり直接観察できないことが海底地すべりの解明を困難にしている。海底堆積物が不安定になるメカニズムとして,堆積層の境界での過剰間隙水圧の存在があげられる。Kokusho et al. (2000) は海底地すべりの1つの発生要因として,液状化による水膜現象を提唱し,水膜が発生すると傾斜角度が安息角よりも低い地盤においても,海底地盤が側方流動する可能性を示した。また,Elger et al. (2018) はガスハイドレートが地中内部で水圧破砕を引き起こし,過圧流体が上方に移動することで海底地すべりを引き起こす可能性を示した。いずれの研究においても透水性が異なる層が連続して堆積する場合に,層境界に生じた過剰間隙水圧が境界面の摩擦係数を低下させ,海底地すべりを引き起こすことが示唆されている。しかしながら,実際の地盤は圧密・続成作用により固結していることが考えられるが,堆積層境界の固結度が水膜の形成に与える影響を検討している研究は行われていない。

本研究では,堆積層境界の固結度が水膜の形成に与える影響を把握するため,水膜形成実験を行った。砂層と低透水層にそれぞれポルトランドセメントを所定の量配合し,層境界の固結度(圧密・続成の度合い)を変化させた。この試料の底部から水圧を与え,過剰間隙水圧を発生させた。その結果,ポルトランドセメントの量と水膜が形成される圧力には明確な関係性が確認された。このことは,堆積層境界の固結度が水膜を伴う海底地すべりの発生に重大な影響を与える可能性があることを示している。

[文献]
1. Kokusho, T.: Mechanism for water film generation and lateral flow in liquefied sand layer, Soils and Foundations, Vol.40, No.5, p99-111, 2000.
2. Elger, J., Berndt, C., Rupke, L., Krastel, S., Gross, F., and Geissler, W.H.: Submarine slope failures due to pipe structure formation, Nature communications, 9(715), 2018.