JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS12] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

コンビーナ:小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、内田 太郎(筑波大学)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)

[HDS12-02] 宇宙線生成核種を用いた大規模斜面変動の発生履歴推定: 多様なアプローチの適用性と限界

★招待講演

*松四 雄騎1 (1.京都大学防災研究所 地盤災害研究部門 山地災害環境分野)

キーワード:斜面自重変形、岩盤崩壊、露出年代測定、地形モデリング

本講演では,大起伏斜面において自重変形や岩盤崩壊などの大規模変動が生じた年代の決定や,その時空間的な頻度の分析における多様なアプローチでの宇宙線生成核種の応用について述べる.大規模斜面変動が発生したタイミングの推定においては,それによって生じたノンテクトニック断層崖や露出すべり面,あるいは崩壊堆積物を対象とした造岩鉱物中の宇宙線生成核種の分析に基づく露出年代測定を適用することができる.ただし,露出前の宇宙線照射や露出後の削剥などにより,単純な露出履歴を前提とした計算ができない場合も多い.斜面変動の発生年代や進行過程を正しく復元するためには,複数試料の分析によるクロスチェックや核種の生成と蓄積および地形過程についてのモデリングが必要となる.ここでは,核種濃度のモデル計算やいくつかの実際の事例に基づき,適用性と限界について議論する.一方,山塊や流域といったある程度の拡がりをもつ領域について俯瞰したときには,多数の斜面変動痕跡地形の年代測定や,多地点での斜面岩盤ボーリングコアに対する宇宙線生成核種濃度の深度プロファイルの解析によって,その領域内における大規模な斜面変動の時空間的頻度についての情報を得ることができる.これについても実例や新たなアイデアを提示し,今後の展望を述べる.