JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG01] 自然資源・環境の利用・変化・管理:社会科学と地球科学の接点

コンビーナ:佐々木 達(宮城教育大学)、上田 元(一橋大学・大学院社会学研究科)、古市 剛久(宮城教育大学)、大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)

[HGG01-04] 伝統的な水場の管理と持続可能な水利用

*元木 理寿1 (1.常磐大学総合政策学部)

キーワード:持続的な水利用、伝統的な水場の管理、湧水、島嶼

地域における水と人との距離が遠くなっているといわれて久しい。人間生活を取り巻く環境が変化する中で,直接的に目にする,触れる機会が少なくなった水は,私たちの環境認識を単純化させ,水と人との関わりという行動レベルでも,濃密な相互作用を失わせてきた。とりわけ,生活環境の中での水の位置づけの変化について,嘉田(1995)は「上・下水道が整備され,シャドウ・ウォーター化したことにより,本来の水と人間生活とのかかわりについて理解が低下してきていることが,環境理解を表面的なものとし,環境問題を生み出す背景になってきているのではないか」と指摘している。このような現象は,水と人との関係が一般的に先鋭化しやすい島嶼においても同様にみられる。島嶼では,離島振興法施行以降,水道敷設以降から生活用水をはじめとする水利用の利便性は増し,水環境を大きく変化させた。また,災害によるライフラインの断絶も度々みられ,地域資源としての水への対応が迫られるものの,復旧はかつての比べ格段に早くなっているため,水に対する理解や意識は低下傾向にある。これらを踏まえて元木・萩原(2011)は,鹿児島県沖永良部島を対象に水環境の現状と水利用の実態を調査したところ,上水道の普及や生活様式の変化により,水環境への理解や認識に変化がみられるようになったことを明らかにした。また,かつての湧水利用に伴う地域の水文化の継承や水源などの持続的な保全管理が困難になりつつある現状を捉えることができた。本研究では沖永良部島,与論島,喜界島を事例として,今日の水環境を明らかにするとともに,伝統的な水場の管理(湧水地の共有性)と持続可能な水利用について検討することを目的とする。

文献:
嘉田由紀子 1995『生活世界の環境学-琵琶湖からのメッセージ-』農山漁村文化協会.

元木理寿・萩原 豪 2011 鹿児島県沖永良部島における水環境と生活水利用の現状.常磐大学コミュニティ振興学部紀要,13,pp.57-68.