JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM02] Geomorphology

コンビーナ:八反地 剛(筑波大学生命環境系)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)

[HGM02-03] Sentinel-1による時系列SAR干渉画像を用いたネパール,カリガンダキ沿川の地すべり性地表変動の計測

*佐藤 浩1千木良 雅弘2鄒 青穎3 (1.日本大学文理学部、2.京都大学防災研究所、3.弘前大学農学生命科学部)

キーワード:地すべり、山体重力変形、Sentinel-1、合成開口レーダー、LiCSAR、カリガンダキ

本研究では,ネパール,カリガンダキ沿川の地すべり性地表変動を検出することを目的とする。アルプス山脈南西部の丘陵部では,表層地すべりが大規模な山体重力変形斜面(DGSD)を原因として関連づけられている(Tibaldi et al. 2004). また,Tibaldi et al. (2004)は,後氷期の活動的な表層地すべりが遷急線から下方の斜面において発達し,このような地すべりは,山体変形を受けている間に斜面が構成するであろう新たな地形縦断形のために不安定となったことを示唆している。Sato (2019)は既に,ネパール,カリガンダキ川がTal BagarとLeteの間の山岳を下刻する対象地域において,SAR干渉画像を判読して変形が発生していることを指摘した。本研究では,地すべり性の変動を検出するために,時系列のSentinel-1の干渉画像と位相をアンラップした干渉画像を用い,ツール「LiCSBAS」で衛星視線方向(LoS)に沿った変動速度を計測した。このツールは,Sentinel-1の干渉SAR自動処理(LiCSAR)を組み込んだオープンソースの時系列干渉SAR解析パッケージによって開発され提供された(Morishita et al. 2020)。Frame ID が158A_06249_131313の2016年9月11日から2018年5月4日に観測された81のデータをダウンロードした。そのデータをSBAS(Small Baseline Subset algorithm)で解析し,約2年間の変動速度を得た(図1)。この図には,Chigira et al. (2019)の地すべり地形分類図が重ね合わされている。図1において,赤色と橙色の点はTal BagarとLete近くの河床遷急点の位置を示している。図1に示すように,Tal BagarとLeteの近くの斜面に2つの測線を設定した。図2に示すように,測線1(Lete近傍)ではLoSに沿って–10mm/年から–30mm/年(下方か東向き)の変動速度を示し,距離600mから1200mで顕著であった。この場所は,地すべり地形分類図では凹地及び古い地すべり地形の滑落崖として判読されている(Chigira et al. 2019)。図3に示すように,測線2(Tal Bagar近傍)ではLoSに沿って–15mm/年から0mm/年(下方か東向き)の変動速度を示し,その速度はDGSDとして判読されている(Chigira et al. 2019)遷急線から下方の斜面よりも,稜線やその近くで大きかった。図2と図3に示した速度はいくつかのノイズを含むかもしれず,まだ検討の余地がある。また,その速度は±15mm/年より大きいかまたは小さいものが有意と見積もられる。しかし,この図に示す計測された速度は地すべり地形分類図と調和的であることが分かった。なお,本研究は,科学研究費補助金(KAKEN 17H02973,研究代表者,京都大学防災研究所千木良教授)の枠組みで行われた。


参考文献
Chigira M, Tsou CY, Higaki D (2019) Gigantic landslides aligned along the Kaligandaki River, Nepal Himalaya. Geophysical Research Abstracts (European Geosciences Union), 21, EGU2019-2738.
Morishita Y, Lazecky M, Wright TJ, Weiss JR, Elliott JR, Hooper A (2020) LiCSBAS: An open-source InSAR time series analysis package integrated with the LiCSAR automated sentinel-1 InSAR Processor. Remote Sensing, Vol.12, 424.
Sato HP (2019): Interpretation of landslide surface deformation along Kali Gandaki River, Nepal using time-series ALOS-2/PALSAR-2 InSAR images. American Geophysical Union Fall Meeting 2019, NH33E-0955. Moscone Center, San Francisco, USA. (9-13 December, 2019)
Tibaldi A, Rovida A, Corazzato C (2004): A giant deep-seated slope deformation in the Italian Alps studied by paleoseismological and morphometric techniques. Geomorphology, Vol.58, pp.27-47.