[HGM03-06] 土層の形成・輸送と斜面安定モデルによる表層崩壊の再現周期の推定:花崗岩とホルンフェルスを基盤とする斜面の事例
キーワード:表層崩壊、再現周期、シミュレーション
本研究では,京都市東山の花崗岩と変成岩を基盤とする斜面において,宇宙線生成核種10Beと航空レーザー測量を用いて土層の形成と輸送の速度を明らかにし,水文観測によって降雨に対する間隙水圧の変動を調べた.そのうえで,土層の形成と輸送に基づいた土層発達のシミュレーションを地理情報システム上でシミュレートし,観測結果に基づいた地盤内の水分変動特性を組み込んだ斜面水文モデルと斜面安定解析を組み合わせることで,表層崩壊の再現周期を推定した.土層の形成速度は,両方の地質の斜面で土層厚の増加とともに指数関数的に減少し,どの深度でも花崗岩斜面のほうが速かった.いずれの地質の斜面でも,尾根から谷頭凹地に向かって土層は厚くなったが,花崗岩斜面の土層厚は相対的に薄かった.土層の形成速度と土層厚の空間分布の関係から推定される土層の輸送係数は,ホルンフェルス斜面と比べると花崗岩斜面のほうが約4倍も大きかった.土層のせん断強度定数は,不攪乱試料を用いた一面せん断試験によって決定され,花崗岩土層は粘着力が小さく,せん断抵抗角が大きかった.花崗岩とホルンフェルスの斜面の間隙水圧は,先行降雨が十分にあり土層が湿潤な条件下では,速やかに上昇したものの,観測期間を通して不飽和状態であった.これらの結果と確率降雨計算の情報をもとにして,斜面の不安定化を引き起こす地盤内の水文条件を特定する.土層の形成と輸送のモデルと斜面不安定化をもたらす水文過程を組み込んだ斜面安定解析から,土層発達に伴う斜面の不安定化をシミュレートし,表層崩壊の発生周期を推定する.