JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM03] 地形

コンビーナ:八反地 剛(筑波大学生命環境系)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)

[HGM03-11] サンゴ礁の海浜沖に見られる海草帯形成を指示する堆積物
-久米島東部サンゴ礁において-

*佐野 亘1藤田 和彦2平林 頌子1横山 祐典3宮入 陽介3Toth Lauren4Aronson Richard5菅 浩伸1 (1.九州大学大学院地球社会統合科学府、2.琉球大学理学部、3.東京大学大気海洋研究所、4.アメリカ地質調査所、5.フロリダ工科大学)

キーワード:サンゴ礁、海草帯、有孔虫、放射性炭素年代測定、完新世

サンゴ礁の海浜沖には海草帯と呼ばれる生物・地形分帯がある。海草帯は海草類の群落であり、底質は砂礫質の堆積物で構成され、低潮位でも干出しない汀線付近から水深4mを超える場所にも形成されることがある。また海草帯は、魚類や底生生物の生息・産卵の場、ウミガメやジュゴンなどの海草を摂食する貴重な生物種を支える場である(Unsworth et al., 2019)。このように海草帯はサンゴ礁においてさまざまな役割を果たしており生態学的に注目される一方、サンゴ礁に海草帯がいつ頃から形成されていたのかという時間的な検証はほとんど行われていない。
 研究対象地域である久米島のサンゴ礁地形は約8300年前から形成を開始し、約5700年前に礁嶺が海面に到達。さらに礁嶺の海面到達後、外洋と分断されたラグーンが未固結堆積物で埋積されるということが明らかになっている(Takahashi et al., 1988, Kan et al., 1991)。しかし、これらの先行研究は主に固結した礁石灰岩コアを用いて礁嶺の形成過程に焦点が当てられものであり、海草帯に代表される未固結堆積物で構成された沿岸域に関しては、その地形発達プロセスに関する科学的知見が少ない状況である。
 そこで本研究では現成海草帯において採取された堆積物コア試料を用いてその堆積物と年代を検討するとともに、現成海草帯の現地調査を行い、海草帯の地形発達過程とそれに伴う海草帯の形成時期を明らかにした。
久米島東部の海草帯における現地調査では、現生の海草葉上に優占的に生息する大型底生有孔虫(Calcarina calcarinoides)を発見した。この有孔虫化石を海草帯形成の指標として堆積物中に含まれる有孔虫の群集解析を行った結果、約3900 cal yr BP以降(水深3m以浅)に海草帯形成を指示する結果が得られた。また砂質堆積物の粒度分析の結果、海草帯形成を指示する層準では、それ以前に比べて堆積物の淘汰が良いことが明らかになった。これは海草帯の底質固定能力を示していると考えられる。よって海草帯は、海草類が群落を形成することにより、その底質に堆積物を固定しながら上方に成長した地形であるとみられる。