JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC07] 地球温暖化防⽌と地学(CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、今野 義浩(東京大学)

[HSC07-01] 公開情報を用いたヒストリーマッチングと貯留容量評価

*重岡 優希1西山 治希1木野戸 広1鳥羽瀬 孝臣2中島 崇裕3薛 自求3 (1.株式会社J-POWERビジネスサービス、2.電源開発株式会社、3.公益財団法人地球環境産業技術研究機構)

キーワード:CCS、貯留シミュレーション、貯留層評価

日本政府は、2050年までに温室効果ガスを80%削減することを目標としている。日本では、温室効果ガスの9割以上がCO2であり、その4割を発電部門が占めている。発電部門では、エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立が求められており、化石燃料を用いる火力発電にCCSを付けることが不可欠と考えられる。そのため、Jパワーグループは、CO2地中貯留に関する研究を進めている。
 CO2地中貯留の課題の一つとして貯留層評価がある。貯留層評価においては、「圧入性能の評価」と「貯留容量の評価」の2つが重要である。本研究では、数値解析において操業中のQuest CCSプロジェクトの公開報等を用いてヒストリーマッチングを行い、その上で貯留容量を評価した。(なお、本検討は公開情報に基づくものであり、事業者が行う評価とは異なる。)

 本研究は2段階のステップで行った。
(1)解析モデルの作成
 Quest CCSプロジェクトの情報は、カナダ・アルバータ州政府のHPに公開されている。その公開情報で知り得る限りのデータを用いた。解析モデルの作成に当たっては、先ず公開される地質情報(堆積環境、地盤物性値等)を用いて初期モデルを作成した。次に圧力経時変化に関して、操業開始後のモニタリング結果、及び事業者が行う長期的な予測シミュレーション結果に整合するようにヒストリーマッチングを行って初期モデルを修正した。これらの検討により、貯留容量評価のための土台となる解析モデルを作成した。
(2)貯留容量の評価
 Quest CCSプロジェクトの公開情報に基づく解析モデルを用いて、解析的手法により貯留容量の評価を行った。圧入坑井配置等のケーススタディーを行い、圧入時の貯留層の圧力上昇量を一定値以内に抑制しながら最大圧入量(貯留容量)を評価した。そして、貯留容量の評価に影響を与える要因を分析するとともに、各物性値の影響について基礎的知見をまとめた。これらの知見は、貯留層内の圧力上昇やCO2プルームの分布等を予測した上で、対象とする貯留層を有効に活用する(無駄なく利用する)ための圧入坑井の配置、坑井数、圧入流量・時間、また必要に応じて圧力緩和井の設置などの「貯留層マネジメント」を可能にするものとして期待できる。