JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC07] 地球温暖化防⽌と地学(CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、今野 義浩(東京大学)

[HSC07-14] CO2ハイドレート貯留における液体CO2の圧入性能評価

*鳥羽瀬 孝臣1庄路 友紀子1西山 治希2重岡 優希2木野戸 広2 (1.電源開発株式会社、2.株式会社 J-POWERビジネスサービス)

キーワード:CCS、CO2地中貯留、ガスハイドレート、シール機能、圧入性能

日本は現在、年間約12億トンのCO2を排出し、発電部門はその4割を占めている(約5億トンの排出量)。日本政府は2050年までに温室効果ガスの80%削減を目標にしており、目標を達成するためには発電部門からの排出量を実質ゼロにする必要がある。2050年の電源構成シナリオにもよるが、仮に非化石エネルギーである再エネと原子力を合わせて60%とした場合、残りの40%はCCS付き火力(石炭、天然ガス)で担うことになる。この場合のCCSによるCO2貯留量は年間2億トン(=5億トン×0.4)となる。

 CO2地中貯留は現在、帯水層貯留とCO2-EORが一般的である。日本に限って言えば、在来型の油ガス田が少ないのでCO2-EORには期待できない。帯水層貯留に関しては現在、国の適地調査が進められているが、年間2億トンの貯留サイトが確保できるか否かについては定かな情報がない。このような状況で、2050年(30年後)の80%削減に向けて、貯留適地の選択肢を増やすことが急務であると考えた。

 筆者は、CO2地中貯留の適地拡大に寄与できる新たな貯留方法として、ハイドレートメカニズムを利用したCO2地中貯留(「CO2ハイドレート貯留)と呼ぶ)を提案している。CO2ハイドレート貯留のトラッピングメカニズムは、地質構造としてのキャップロックではなく、ハイドレートを生成する温度圧力条件である。日本周辺海域(深海部)の温度圧力条件を調べたところ、広い範囲でCO2ハイドレートを生成する条件を満たしていることが分かった。CO2ハイドレート貯留の概念についてはJpGU2019の予稿集を参照されたい。CO2ハイドレート貯留の研究課題は、①CO2漏洩防止(シール性能の確保)のための地層内でのハイドレート生成時の浸透性低下メカニズムを定量的に評価すること、②ハイドレート生成領域の下位地層に圧入・貯留する液体CO2の圧入性能(injectivity)を評価すること、の2つである。

 本報告では、液体CO2の圧入性能に焦点を当てる。海底下地層の地質条件を一定と仮定して、温度・圧力条件に応じて圧入するCO2の密度、粘度、相状態を設定してシミュレーションを行った。温度20℃/圧力15MPaの液体CO2と、温度35℃/圧力20MPaの超臨界CO2の圧入性能を比較した結果、両者に大きな差異がないことが分かった。このことは液体CO2で圧入することの妥当性を示唆すると考えられる。なお、本検討では、液体CO2・超臨界CO2ともに超臨界CO2の相対浸透特性を用いた。今後、液体CO2の相対浸透特性のデータを得て、あらためて液体CO2の圧入性能評価の精度を向上させる予定である。