JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC07] 地球温暖化防⽌と地学(CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、今野 義浩(東京大学)

[HSC07-15] 数値計算による砂層内CO2ハイドレート生成に伴う浸透率変化のモデル化

*佐藤 徹1濃野 歩2山口 純二1 (1.東京大学 大学院新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻、2.東京大学 工学部 システム創成学科)

キーワード:有効浸透率、孔隙スケールシミュレーション、CO2ハイドレート、格子ボルツマン法; 、フェイズフィールドモデル

Carbon Capture and Storage(CCS)は大気中に放出される前のCO2を分離・回収し地中に貯留する方法であるが、貯留には海底下のキャップロックとなる泥岩層の下に位置する帯水層に封入する方法が有効だとされている。ただし、キャップロックに亀裂が入る場合など、万が一の漏洩リスクがある。一方、海底面付近の温度・圧力がCO2ハイドレートの安定領域である海域を選択すれば、CO2ハイドレートが生成され、亀裂の有無にかかわらず安定的にCO2を貯留することが期待される。

Fukumoto et al.1) は球体であるガラスビーズが詰まった計算領域内でのメタンハイドレードの成長をPhase Field Model によって再現する計算モデルを作成し、ハイドレート飽和率による浸透率変化の比較を行った。Fuji et al.2)はFukumoto et al.1) を参考に、ガス状のCO2がハイドレート化する際に、水の初期飽和率や接触角といったパラメータがハイドレートの存在形態にどのように影響を及ぼすかを調べた。本研究においては、日本周辺の海域に多く見られる温度・圧力条件を考慮して液体CO2を対象にし、さらに実規模空間における温度拡散を考慮することでより実際のハイドレートの成長環境に近い環境をマイクロスケールの計算領域内に仮想的に再現することで、ハイドレートの生成による有効浸透率のモデルを求めることを目的とする。

本研究の数値計算は 4 段階に分けられる。まず、計算領域内に砂粒子を配置し、次に二相流 Lattice Boltzmann Methodを用いて液相を配置する。そして、Phase Field Model によるハイドレートの成長を表現し、最後に単相流Lattice Boltzmann Method による浸透率計算を行う。以上の計算では圧力は常に一定であり、系の温度のみがハイドレートの生成熱によって上昇し続ける。よって温度が高くなるほどハイドレートは成長しにくくなり、設定した圧力における平衡温度を超えるとハイドレートは成長しなくなる。ところが、実際の砂層スケールにおいてはハイドレートが成長している部分の温度が高くなると、ハイドレートが存在しない周辺部分への熱拡散が起きる。本研究ではマイクロスケールの計算領域内にこれを再現するために誤差関数を用いて温度拡散を表現した。
数値計算によってえられたそれぞれケースにおける有効浸透率をもとにして、孔隙率0.44の砂層における浸透率変化のモデル化を行った。Kozeny-Carmanモデルを基軸とし、生成したハイドレートを固相として扱い、砂と共存する場合の比表面積と、ハイドレート生成後のKozeny係数をモデル化したところ、有効浸透率の計算値と作成したモデルによる予想値は概ね一致しており、本研究のモデリングは妥当な精度を達成できていると考えられる。