JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT16] 環境トレーサビリティー手法の開発と適用

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、Ki-Cheol Shin(総合地球環境学研究所)、山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)

[HTT16-01] 環境トレーサビリティー手法を用いた環境研究

*陀安 一郎1藤吉 麗1藪崎 志穂1SHIN Ki-Cheol1中野 孝教1谷口 真人1 (1.総合地球環境学研究所)

キーワード:安定同位体、多元素同位体地図、環境トレーサビリティー

水、大気、生物、土壌など生態系を構成する種々の要素のなかには、元素の安定同位体比という指紋が内在されている。この指紋情報がもつトレーサビリティー機能を用いると、さまざまな地域や時間のスケールを対象とする地球環境問題の解決に資する研究を行うことができる可能性がある。元素の安定同位体比は、元素の濃度とともに用いることにより、環境中の物質の流れを追跡することに加え、生態系の構造を記述することができる。多元素の安定同位体比の時空間変動は、地域レベルから地球規模に及ぶ地球システムを研究するために使用することができる。この情報は、さらに人々が水、食糧、環境保全などの重要な意思決定を行う上で活用することができる可能性があり、これらは人間社会の持続可能性にとっても活用しうる。

総合地球環境学研究所で2017年度から2019年度まで行なわれた「環境研究における同位体を用いた環境トレーサビリティー手法の提案と有効性の検証」の研究においては、環境研究において環境トレーサビリティーの概念をどのように利用するかについての方法論を確立することを目的とした。複数の元素とその同位体比を使用した「多元素同位体地図」のマッピングと、アンケートなどの社会的調査の組み合わせを展開し、環境トレーサビリティー手法を環境問題の解決にどのように活用するかを検討した。その結果、学際的プロセスにおけるトレーサビリティー手法の役割と利用可能性は対象とする関係者で異なり、「多元素同位体地図」の共同制作は地域環境の変化を理解し説明するのに効果的な結合ツールとして機能した。今後は、その結果をもとに作成したホームページを活用し、同位体手法を用いた研究の提供者と利用者をつなぐ相互プラットフォームとしての活用法について検討する。