JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT17] 環境リモートセンシング

コンビーナ:島崎 彦人(独立行政法人国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校)、近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長谷川 均(国士舘大学)、石内 鉄平(宮城大学)

[HTT17-P01] ハイパースペクトルデータを用いた鉱物組成マッピング手法の開発

*栃倉 芳年1山口 靖1淺野 友紀瑛2野田 周帆2川上 裕2増田 一夫2 (1.名古屋大学、2.独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)

キーワード:リモートセンシング、地質マッピング、ガウシアンフィッティング

リモートセンシングによる鉱物・岩石の識別やマッピングは、金属資源探査の初期段階において有望地の選定や開発候補地の絞り込みに用いられている。粘土鉱物や炭酸塩鉱物などは、その種類や組成に応じて可視~短波長赤外域に吸収を持つため、リモートセンシングにより観測されたデータから吸収中心波長を特定することができれば、その地点に分布する鉱物の種類や組成を知ることが可能である。鉱物の種類の違いに起因する吸収波長の変化幅は、数十nm程度以上あることが多いが、同じ鉱物の化学組成の変化に対応した吸収中心波長の変化幅は、10nm程度の場合もある。

近年、従来のセンサと比較して波長分解能の高い衛星または航空機搭載のハイパースペクトルセンサが登場してきたが、それらの波長分解能は5~15nm程度にとどまっており、鉱物組成の変化を捉えるには、波長分解能は必ずしも十分に高いとはいえない。そのため本研究では、ハイパースペクトルセンサにより観測された反射スペクトルから吸収中心波長を正確に検出することを目指し、手法開発および提案手法の性能評価を行った。

本研究では、鉱物内の単一要因による吸収はガウス関数の形で表現できると仮定し、センサで観測される反射スペクトルは複数のガウス関数の和の形で表現されるとした。提案手法の概要は、以下の通りである。初めに、観測された反射スペクトルに対してContinuum Removal(CR)を用いて吸収ピークの強調処理を行う。その後、吸収が強調された反射スペクトルから連続ウェーブレット変換を用いて吸収ピークのおおよその中心波長を求め、その値を初期値としてガウシアンフィッティングを行う。この際、徐々にフィッティングに用いるガウス関数の数を増やしていき、フィッティング後の誤差とフィッティングパラメータを基準としてフィッティングを打ち切る。打ち切ったときの各ガウス関数が、鉱物内の各吸収要因によるものであるとみなす。

この提案手法について、2つの観点から性能評価を行った。初めに、実験室にて測定した高波長分解能のスペクトルを、衛星や航空機搭載センサの波長分解能に対応した応答に畳み込んだものに対して提案手法を適用し、元のスペクトルが外形的にどの程度復元されるのかを評価した。畳み込みの際にはノイズを人工的に付加することにより、提案手法のノイズ耐性についても同時に検証を行った。次に、吸収ピークが既知のスペクトルを用意して、上記と同様に畳み込みにより模擬スペクトルを生成し、提案手法により検出される吸収ピークがどの程度の誤差を含むかを評価した。これら2つの方法で提案手法の性能評価を行った。

最後に、航空機搭載型ハイパースペクトルセンサ(AVIRISおよびAVIRIS-NG)から観測された実際の画像データに対して提案手法を適用し、現地調査の結果と比較した。提案手法により得られた結果は、HSV表色系を用いて画像表現した。すなわち、吸収の中心波長をH(色相)、吸収の深さをS(彩度)とV(明度)の3つのパラメータにそれぞれ割り当てた。テストサイトはアメリカ合衆国ネバダ州のCuprite地域とGoldfield地域、カリフォルニア州のMountainPass地域で、それぞれの地域で対象とした鉱物は、Cuprite地域ではEpidote、Goldfield地域ではAlunite、MountainPass地域では炭酸塩鉱物である。これらの鉱物は、その化学組成に応じて吸収中心波長が徐々にずれていくことが知られており、本研究の提案手法により、その空間的な分布と変化を捉えることができた。また現地調査の結果とも整合的であった。