JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 浅部物理探査が目指す新しい展開

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、井上 敬資(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)

[HTT18-03] 偏波特性を利用した地中レーダー探査法の有効性に関するモデル実験と数値シミュレーション的検討

*中村 友洋1後藤 忠徳2小池 克明1鈴木 敬一3草茅 太郎3 (1.京都大学大学院工学研究科、2.兵庫県立大学大学院生命理学研究科、3.川崎地質株式会社)

物理探査法の一種である地中レーダー探査法は主に地下浅部を対象とし、埋設物調査や地質・資源調査に用いられている。データ処理にはコモンオフセット法やCMP法などが一般に利用されるが、これらには反射波の到達時刻の情報しか適用されておらず、地下構造や物性を正確に把握することは依然として困難である。これを改善するには、走時情報のみでなく、反射波の大きさや波形の情報を増やす必要がある。そこで本研究では、より多くの地下情報を得るために、アンテナの向きを変えながら計測する手法を検討している。従来の計測法ではアンテナの向きを固定しており、電磁波の1つの偏波成分しか利用していない。これに対して、本研究ではアンテナの向きを2通りに設定してワイドアングル計測を行った。また実験から得られたデータをシミュレーション結果と比較することで、偏波特性を利用した地中レーダーの有用性の検証、およびシミュレーションの妥当性についての考察を行った。

まず珪砂を敷き詰めた水槽を用いて、小規模な地中レーダー探査実験を実施した。この水槽では地下水位をモニタリングしながら変化させることができる。今回は水位を5段階に分け、ワイドアングル測定を行った。設定したアンテナの向きは、測線に対して垂直と平行の2種類である。次に水位変化およびアンテナの向きによって生じるレーダー波形の変化を定量的に明らかにするために、電磁波伝播シミュレーションを行った。計算が高速であることから、解析法は電磁場解析の主要な手法として知られる3次元FDTD法を用いた。実験結果とシミュレーション結果を比較した結果、反射波の大きさや到達する時刻が概ね対応した。また波形も大きく変化することがわかり、レーダー間隔だけでなくアンテナの向きによる反射特性の違いが現れることが示唆された。この違いを利用して、誘電率などの物性を求めることを検討中である。