JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 浅部物理探査が目指す新しい展開

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、井上 敬資(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)

[HTT18-06] レーリー波減衰係数の評価ツールとしての微動アレイの可能性

*長 郁夫1 (1.産業技術総合研究所)

キーワード:微動、アレイ、解析手法、位相速度、減衰係数

微動アレイを用いた位相速度解析でSPAC法が良く用いられている.通常のSPAC法の処理ではインコヒーレントノイズは小さいと仮定され無視される.しかし,SPAC法及びその派生法(例えばCCA法)の基礎式には一般にインコヒーレントノイズによるNS比(SN比の逆数)と位相速度の両方のパラメータが含まれる(Cho et al., 2006).そこでこれらの基礎式を組み合わせて位相速度とNS比の連立方程式と見る.これを周波数ごとに解くことで,インコヒーレントノイズによるバイアスの影響を受けていない位相速度のスペクトル(分散曲線)とNS比のスペクトルが得られる.

産総研敷地内において異なる半径で多数のアレイ観測を実施した(r=0.17-7mの28個).得られたNS比のスペクトル(2-20Hz)を観察すると,インコヒーレントノイズを無視する通常のSPAC法で位相速度が適切に推定される周波数帯域であってもNS比は0ではないことが示された.そして,その帯域では,一般に,アレイ半径rとNS比の大きさが正相関する傾向が見られた.Prieto et al. (2009)に従えば,この傾向は地盤の内部減衰によるコヒーレンスの低下であり,SPAC係数に乗じるexp(-α(f)/r)(α(f)は減衰係数)というファクターでモデル化できる可能性がある.

代数計算に基づけば,上述の減衰係数α(f)は,NS比を半径で正規化した量と近似的に一致する.そこでアレイごとのNS比のスペクトルをそれぞれ半径で正規化して互いに比較した.その結果,正規化スペクトルの周波数特性は互いに似ており,平均的にα(f)=k f**N(k=0.01, N=2)でモデル化できた.このような特性は通常の表面波探査で得られる一般的な減衰係数の周波数特性と良く類似する.

以上の結果は,微動アレイが,地盤の減衰係数α(f)を評価するツールと成り得ることを示している.今後は表面波探査に基づく減衰係数との比較により結果を検証したいと考えている.