JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 浅部物理探査が目指す新しい展開

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、井上 敬資(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)

[HTT18-P06] 独立型電気探査装置を用いた三次元電気探査の測定と解析

*木佐貫 寛1櫻井 健1 (1.応用地質株式会社)

キーワード:電気探査、3次元

電気探査は地盤の比抵抗分布を連続的に把握可能な技術である。その実施方法は、1次元探査、2次元探査、3次元探査があるが、精度よく地盤の構造を評価するためには、3次元探査の適用が望ましい。しかしながら、3次元探査を実施する場合、必要な資材の増加や測定に要する日数の増加など、適用するためには様々な課題があり、土木分野で実用化に至っていない。

課題の一つである測定時の作業性を改善可能な測定システムとして、送信と受信が分離された測定システムが開発された(Truffert et al., 2017)。本システムは、送信器と受信器をGPSによって同期させることで、従来の電気探査で必要であった全ての電極を測定装置本体につなぐためのケーブルが不要となった。このため、電極とケーブルを接続する作業が少なくなり、作業性の改善が期待できた。

筆者らは、新しい測定システムの有用性を評価するために、つくばにある当社の敷地内で三次元電気探査を実施した。調査範囲は48m×48mとした。本測定では、16台の受信器を使用し、40か所から電流を流した。受信器は1台当たり、3つの電極を用いて、2チャンネルの測定が可能である。ここでは、電極間隔を4mとし、互いに直交する方向を取得するために、3つの電極をL字型に配置した。

測定した結果、得られた1280のデータのうち、一部のデータが負の見かけ比抵抗を示した。通常、電気探査の逆解析は見かけ比抵抗の対数を扱うことから、得られたデータの中に負の見かけ比抵抗が含まれている場合、負の見かけ比抵抗を除去して解析する必要があった。この問題を解決する方法として、Loke et al(2019)は新しい解析方法を提案した。これは、一つの受信器で得られた二方向のデータを合成し、振幅と方位に変換して解析する方法である。筆者らは、この解析手法を現在開発中の解析プログラムに組み込み、得られたデータに対して逆解析を実施した。その結果、負の見かけ比抵抗が含まれていても安定して解析することができた。

送受信器が互いに独立した測定システムを用いることで、自由な電極配置が可能となり、多チャンネルケーブルが不要となったことから、測定時の作業性を改善することができた。また、今回適用した新しい解析手法は、負の見かけ比抵抗を含んだデータに対して、有効な解析手法であった。これらハードとソフトが開発されたことで、土木分野における三次元電気探査の適用が現実的となった。



参考文献:

Truffert, C.M., 2017, A new distributed and cable less system for large 3D electrical resistivity ERT and induced polarization tomography : 9th Congress of the Balkan geophysical society.

Loke, M.H., Gance, J., Truffert, C. and Leite, O., 2019, The inversion of vector array data sets for 3-D resistivity and I.P. surveys : 25th European meeting of environmental and engineering geophysics.