JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 浅部物理探査が目指す新しい展開

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、井上 敬資(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)

[HTT18-P08] 斜面下の地下水動態可視化のための3次元自然電位トモグラフィーの開発

*石川 彩香1服部 克巳1 (1.千葉大学大学院)

近年,集中豪雨の頻度が増加するにつれて,斜面崩壊の発生件数も増加する傾向にある。降雨に起因する斜面崩壊の過程を理解し,斜面の監視や斜面崩壊発生時刻を予測することは重要な課題である。我々は,自然電位(SP)法による斜面崩壊の早期警戒システムの開発を試みている。SP法とは,地下水動態によって自然に発生した電位を地表付近に埋設した電極で受動的に測定する方法である。この手法は,ボアホールを掘削し、間隙水圧計を用いた観測に比べてコストが安く,簡便に広範囲にわたり観測ができる利点がある。これまでの室内実験の結果から,水の動きや土層の変位とSP変動との間に関係があること(界面導電現象がSP発生源)が確認されてきた。さらに,水槽実験ではSP法を用いた地下水動態の可視化(2次元SPトモグラフィー)が有効であることが検証された。しかし,実斜面への応用には3次元 トモグラフィー技術が必要である。そこで本論文では水槽実験を用いて、地下水動態の3次元可視化を実現する自然電位トモグラフィーの構築を試みた。具体的には、数値シミュレーションによる地下水流動による発生する自然電位の推定(純問題)および前述のシミュレーションによって発生した自然電位から地下水動態(圧力水頭や水流)を推定する逆問題の整合性を検討する計算機実験を行うとともに、推知実験と同等のパラメータを用いた実水槽実験による検討を行った。ここで計算機および実実験は、水槽に均質な砂を敷き詰め、側面のタンク下部から水を注入する水槽への注水実験である。土層の透水係数や界面導電係数など水槽内の土層の砂に関するパラメータは 別の実験で計測してあり、水槽内では一定としているが、現実的な値を使用している。
まず計算機実験による順問題による発生自然電位と逆問題によって求められた間隙水圧(圧力水頭)や水流の再構成結果は、調和的であり、構築したトモグラフィーアルゴリズムと有効性が実証された。また先行研究の2次元トモグラフィーによる再構成結果と比較すると、圧力水頭や水流ベクトルの大きさの誤差は概ね小さくなっており良好な結果となった。次に前述の計算機実験と同じスキームの実実験を実施し、観測された自然電位からトモグラフィーによる水頭、水流の逆解析を行った。その結果、実実験では土層の不均一性の影響のため、圧力水頭分布がシミュレーションによる理想的分布とは異なることがわかった。再構成した水流については、実実験のトレーサーのよる流動方向と再構成したベクトルの向きが概ね調和的であることがわかった。界面導電現象による自然電位発生モデルと構築したトモグラフィーアルゴリズムと有効性が実証された。多層構造や実斜面への適用が今後の課題であるが、斜面下浅部の地下水動態の可視化への応用が期待される。詳細は講演時に発表する。