[HTT18-P09] 核磁気共鳴コアスキャナーの開発:ボーリングコアの体積含水率計測にむけて
キーワード:体積含水率、非破壊計測、ボーリングコア
浅層の物理探査では、探査結果のクロスチェック目的あるいは物探データ解析作業の一助にするために、ボーリングコアを採取してコア分析を行うケースがしばしばある。地層中の間隙水の存在は、物理探査データに強く影響を及ぼすので、体積含水率の計測はコア分析項目群の中でも重要度が高い。そのような背景のもと、私は非破壊・オンサイトでコアの体積含水率を計測できるコアスキャナーの開発を実施中である。
そのスキャナーの原理は、time-domainプロトン核磁気共鳴現象(いわゆるNMR)を採用している。永久磁石でつくった静磁場環境にコアを置き、そこに高周波コイルから共鳴周波数に相当するラジオ波を照射して水分子中の水素原子の核スピンを励起し、直後に発生する過渡的な核スピンの横緩和過程を同じコイルで検出する。この手法の長所は、体積含水率だけではなく、横緩和の時定数が空隙サイズに比例することを利用すれば空隙サイズ分布や透水係数を推定できるケースがある点である。一方、短所は、数百mTの永久磁石の静磁場環境にコアが暴露されるので古地磁気情報が失われるリスクがあること、粘土の層間水などの分子運動性が悪い水分子は信号検出が困難であること(したがって体積含水率の過小評価につながる)、含鉄鉱物のような強磁性・常磁性鉱物が多いコアは磁場が乱れて計測困難になるケースがあることである。
図に示したように、10年ほど前にすでにプロトタイプの核磁気共鳴コアスキャナーは開発済みであるが[1]、そのシステムは計測精度や使い勝手に問題があった。そこで、現在、磁気回路を一新して片側開放型[2-3]というタイプに切り替えたうえでコイルの感度向上や計測手順の簡略化を行っており、今回はその進捗状況と将来展望を発表する。
引用文献:
[1] Nakashima, Y. et al. (2011) Non-destructive Analysis of Oil-Contaminated Soil Core Samples by X-ray Computed Tomography and Low-Field Nuclear Magnetic Resonance Relaxometry: a Case Study. Water Air & Soil Pollution, 214, 681-698. http://dx.doi.org/10.1007/s11270-010-0473-2
[2] Nakashima, Y. (2019) Non-Destructive Quantification of Lipid and Water in Fresh Tuna Meat by a Single-Sided Nuclear Magnetic Resonance Scanner. Journal of Aquatic Food Product Technology 28, 241-252. https://doi.org/10.1080/10498850.2019.1569742
[3] Nakashima, Y. et al. (2020) Nondestructive quantification of moisture in powdered low-rank coal by a unilateral nuclear magnetic resonance scanner. International Journal of Coal Preparation and Utilization (in press). https://doi.org/10.1080/19392699.2020.1722656
そのスキャナーの原理は、time-domainプロトン核磁気共鳴現象(いわゆるNMR)を採用している。永久磁石でつくった静磁場環境にコアを置き、そこに高周波コイルから共鳴周波数に相当するラジオ波を照射して水分子中の水素原子の核スピンを励起し、直後に発生する過渡的な核スピンの横緩和過程を同じコイルで検出する。この手法の長所は、体積含水率だけではなく、横緩和の時定数が空隙サイズに比例することを利用すれば空隙サイズ分布や透水係数を推定できるケースがある点である。一方、短所は、数百mTの永久磁石の静磁場環境にコアが暴露されるので古地磁気情報が失われるリスクがあること、粘土の層間水などの分子運動性が悪い水分子は信号検出が困難であること(したがって体積含水率の過小評価につながる)、含鉄鉱物のような強磁性・常磁性鉱物が多いコアは磁場が乱れて計測困難になるケースがあることである。
図に示したように、10年ほど前にすでにプロトタイプの核磁気共鳴コアスキャナーは開発済みであるが[1]、そのシステムは計測精度や使い勝手に問題があった。そこで、現在、磁気回路を一新して片側開放型[2-3]というタイプに切り替えたうえでコイルの感度向上や計測手順の簡略化を行っており、今回はその進捗状況と将来展望を発表する。
引用文献:
[1] Nakashima, Y. et al. (2011) Non-destructive Analysis of Oil-Contaminated Soil Core Samples by X-ray Computed Tomography and Low-Field Nuclear Magnetic Resonance Relaxometry: a Case Study. Water Air & Soil Pollution, 214, 681-698. http://dx.doi.org/10.1007/s11270-010-0473-2
[2] Nakashima, Y. (2019) Non-Destructive Quantification of Lipid and Water in Fresh Tuna Meat by a Single-Sided Nuclear Magnetic Resonance Scanner. Journal of Aquatic Food Product Technology 28, 241-252. https://doi.org/10.1080/10498850.2019.1569742
[3] Nakashima, Y. et al. (2020) Nondestructive quantification of moisture in powdered low-rank coal by a unilateral nuclear magnetic resonance scanner. International Journal of Coal Preparation and Utilization (in press). https://doi.org/10.1080/19392699.2020.1722656