JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 浅部物理探査が目指す新しい展開

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、井上 敬資(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)

[HTT18-P12] 水中スピーカーを用いた同時発振三次元反射法地震探査に適した発振波形条件の推測

*小川 真由1古山 精史朗1鶴 哲郎1 (1.東京海洋大学)

キーワード:反射法、三次元反射法地震探査、発振波形

日本近海では、沿岸域に分布する活断層を震源とする地震が発生しており (例えば、能登半島地震),沿岸域探査の必要性が増している.近年,一般的に用いられている海上三次元反射法地震探査 (OGP & IACG, 2011) は,構造を空間的に捉えることが可能であり,二次元探査よりも詳細な構造を観測できる.しかし,観測には大容量エアガンと複数本のケーブルの曳航が必要であるため,高コストかつ大規模な調査仕様にならざるを得ない.これらの問題点より,海上三次元反射法地震探査は沿岸域での探査が困難であった. そこで,沿岸域探査を可能にするために考案された手法が,複数の水中スピーカーを振源とし,1本のケーブルのみで探査を行う同時発振三次元反射法地震探査システムである (東京海洋大学, 2018).本手法は振源に廉価かつ小型なサイズ (??200×65 mm, 4.5 kg) である水中スピーカーを用いることで,低コストで調査を実施できるとともに,調査仕様の大幅な縮小を可能とする.加えて,水中スピーカーは最大瞬間音圧が約130 dB re 1μPa at 1m (Tsuru et al., 2019) であり,一般的なエアガンの最大瞬間音圧210 dB re 1μPa at 1m (IAGC, 2002) より非常に小さい.エアガンの大音圧な音は海洋生物の行動や聴覚に悪影響を引き起こしていることが報告されており(Lokkeborg & Soldal, 1993; Cerchio et al., 2014),海洋生物に対しての影響が小さい振源の開発が求められている (Mougenot et al., 2017).上記に記した通り,水中スピーカーは瞬間音圧が小さいため,海洋生物への影響も小さいと考えられ,海洋環境に配慮した振源でもある.
本研究グループでは,より高精度かつ安定して観測を行うために,水中スピーカーの発振波形を開発してきた (小川ほか,2019).本観測システムでは,複数の水中スピーカーからスピーカーごとに異なる非パルス波を発振させる.この非パルス波はMATLAB (MathWorks社) で作成し,信号発生器を用いて発振させる.このように,水中スピーカーを振源とする本手法では,Marine Vibratorなどと同じく,発振波形をコントロールできることも利点の一つである (Orji et al., 2020).本研究では,本観測システムに最適な波形条件を推測するため,2種の波形を作成し,検討・比較を行った.比較した波形は,海洋音響探査や陸上地震探査にて一般的に用いられているsweep波と擬似乱数を用いて発生するrandom波 (e.g. Dean, 2013) である.この2種の波形を3つ周波数帯ごとに作成し,計6つの波形を用いて海上試験を実施した.試験結果から, sweep波よりrandom波の方が本手法に適することが明らかになった.これは,random波の方が相互相関後の波形のS/N比が高くなるためであると考えられる.加えて,sweep波よりも音圧が小さいにもかかわらず,random波の透過深度が深かった.また,周波数成分を50-100 Hz, 100-200 Hz, 200-300 Hzでフィルター処理した反射断面図で比較した結果,100-200 Hz成分多い反射断面図の方が最も高精度であった.