JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT19] 地理情報システムと地図・空間表現

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)

[HTT19-P01] 液状化ハザードマップに必要な掲載情報とわかりやすい表現方法の検討-自治体職員および住民からの意見聴取を通じて-

*遠藤 涼1中埜 貴元1石井 崇2星河 高志2山中 清奈3竹内 裕希子3渡邉 真悟4高田 圭太4藤田 琢磨4 (1.国土交通省国土地理院、2.国土交通省都市局、3.熊本大学、4.復建調査設計(株))

キーワード:液状化ハザードマップ、ワークショップ、アンケート

国土交通省では、液状化の事前防災を促し被害を軽減させることを目指して、総合技術研究開発プロジェクトリスクコミュニケーションを取るための液状化ハザードマップ作成手法の開発を実施している。本プロジェクトでは、液状化ハザードマップの利用主体者が液状化に対する気づきを与えるために必要な掲載情報とわかりやすい表現方法を検討しており、地方自治体においてワークショップおよびアンケートを実施することで、ハザードマップの作成主体となる自治体職員および利用主体となる住民の意見を聴取した.ワークショップおよびアンケートでは紙媒体の液状化ハザードマップの試作版を活用し、液状化ハザードマップに必要な掲載情報および表現方法の適否について意見を聴取したので、その結果を報告する。
試作したハザードマップはA1サイズで、リスクコミュニケーションを図るための基礎資料となることを考慮しオモテ面を地図面、ウラ面を学習・情報面とした。地図面では、地図の縮尺は25,000分の1とし、背景図には国土地理院の数値地図(国土基本情報)を用いて、液状化のしやすさ、液状化による戸建て住宅の被害リスク、避難所・避難場所、緊急輸送道路、鉄道を掲載した。また、配色の違いによる視認性の違いを評価するため、5パターンの配色による地図を用意した。学習・情報面では、液状化とその被害に関する情報、液状化被害を減らすための対策方法など地図面と合わせて液状化に対して意識や理解をさせるために必要と考えられる情報を掲載した。
自治体職員からの意見聴取は、過去に液状化被害を受けた熊本県熊本市および千葉県浦安市において、ワークショップにより実施した。それぞれ主に当該市の職員が参加し、熊本市の参加者は8名 (うち1名は熊本大学の学生)、浦安市の参加者は18名であった。ワークショップではハザードマップの試作版を複数種提示し、ディスカッション方式及びアンケート方式で意見を聴取した。アンケートの回答者 (ワークショップの傍聴職員の回答も含む) は熊本市が11名、浦安市が20名であった。住民からの意見聴取は、熊本市の住民を対象に、アンケート方式およびヒアリング方式により実施した。アンケートは、熊本市南区近見・上之郷において、ポスティングにより400世帯に配布し、郵送により76世帯 (19%) から回答を得た。ヒアリングは、熊本市東区秋津町秋田の住民を代表する4名を対象に実施した。
本稿では、自治体職員からの意見聴取結果について報告する。地図面に掲載すべき情報として、液状化の危険度、避難場所・避難所、主要道路、主要施設、災害時の問い合わせ先、避難経路が挙げられた。地図面の表現においては、液状化しやすさは暖色系を用いて5区分で表現し、かつ水部を寒色系にするとわかりやすいという傾向がみられた。一方で、液状化しやすさおよび液状化による戸建て住宅の被害リスクの凡例の説明のわかりにくさ、説明の文章量の多さが指摘された。液状化しやすさや被害リスクに対する気づきを与えるためには表現の平易さ、視覚的なわかりやすさが求められているといえる。学習・情報面に掲載すべき情報としては、液状化の発生メカニズム、過去の液状化事例、液状化による生活への影響、ハザードマップの見方などが挙げられた。液状化やその影響への知識・認識不足のため、地図面に示す情報が理解されにくい現状がうかがえる。このことから、学習・情報面では液状化やその被害をイメージできる情報とともに、液状化に対するハザードマップそのものの役割・見方・活用法を理解してもらう工夫も必要であるといえる。
今後は、液状化被害を経験したことのない自治体においても意見聴取を行い、それらを基に液状化ハザードマップ作成マニュアルの策定を行う予定である。