JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT19] 地理情報システムと地図・空間表現

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)

[HTT19-P03] シームレス地理情報ステレオビュアーの応用と展望

*領木 邦浩1 (1.職業能力開発総合大学校 能力開発院能力開発基礎系技術基礎ユニット)

キーワード:立体視、HTML、交差法、回転体、地形図、地質図

1.はじめに
地理院地図Globe(国土地理院,2017)を利用するステレオビュアー(図1)は,地形図や空中写真に現れる地質情報の理解を容易にした(領木,2019a).このビュアーは回転する対象を撮影した単一の映像を用いることによって,鉱物の結晶構造や分子模型,土木建築構造物なども立体視することが可能であり(領木,2019b),教育や職業能力開発での活用も期待される(領木,2019c).ここでは,シームレス地質図(地質調査総合センター,2019)の活用例とドローンなどから撮影された映像の利用方法について述べる.
2.立体視の概要
双方の瞳孔位置から立体を写して2枚の画像とし,それぞれを左右の目で個別に見ると,脳は高次の画像処理を行い,画像は立体として認識される(田辺・藤田,2004).この技法は写真が発明されるよりも前から知れれていた(広内,2013).一つの撮影装置で回転体の映像を録画するとき,その映像を時間的にずらして二つの画像として再生し,左右個々の目で見れば,立体視が可能であり(領木,2019a),そのビューアーはHTMLおよびJSによって記述された.
3.シームレスな地質情報の立体視
活断層位置を追跡閲覧する場合,地理院地図Globeを用いてステレオビュアーにそのまま表示すると,PCのモニタ画面の範囲を超えて連続閲覧することはできない.そこで,断層帯の追跡など長いものを表示させたい場合,次の手順によれば可能となる.まず,地理院地図Globeのみをブラウザに表示させてマウスで水平方向に移動させる.このとき,マウスはブラウザの表示に関わらずモニタの幅一杯まで動かせるので,マルチモニタを並べれば広く動かすことができる.この表示をウインドウ記録アプリケーションで録画し,水平方向に非常に長い映像ファイルとして保存する.このファイルを改めてステレオビュアーで閲覧すれば,保存したほぼ全区間をシームレスに立体視して閲覧できる.シームレス地質図などを表示する場合も同様の取り扱いができる.
4.シームレスな空中映像の立体視
ドローンなどから撮影した映像が水平方向に移動または回転するものであれば,そのまま利用できる.移動が垂直方向の映像でも,映像処理アプリケーションによって水平方向に変換すれば,立体視して閲覧可能である(図2).また,Google社が公開し,一般利用を許諾しているGoogle Earth Studio(Google, 2020)は,権利情報を明記するなどの規約に従えば,ステレオビュアーで閲覧可能なファイルを保存できる.水平・垂直方向の撮影のみならず俯瞰や仰望もできるので,地形等の立体的な観察に適している.
5.今後の計画
地理院地図Globeなどでは,サーバから直接地図タイルを読み込んでいる.このため,通信圏外からは閲覧できない.そこで,必要な地域のタイルをあらかじめダウンロードしておいてを使用するようにステレオビュアーを改善する予定である.なお,本研究にはJSPS科研費JP18K03793の一部を使用した.
参考文献
地質調査総合センター(2019):20万分の1日本シームレス地質図,https://gbank.gsj.jp/seamless/.
Google (2020):はじめに,Google Earth Studio, https://earth.google.com/studio/docs/ja/.
広内哲夫(2013):立体視の原理と3D技術への応用,情報システム学会誌,Vol. 8, No. 2, pp. 5-16.
国土地理院(2017):地理院地図Globeの正式公開,http://www.gsi.go.jp/common/000185126.pdf.
領木邦浩(2019a):地理院地図Globeを利用したシームレス地理情報ステレオビュワー,日本情報地質学会講演会講演要旨集,30,31-32.
領木邦浩(2019b):地理情報ステレオビュアーによる地理院地図Globeの立体視,地理院地図パートナーネットワーク会議資料,11,15, https://maps.gsi.go.jp/pn/meeting_partners/data/20191128/15.pdf.
領木邦浩(2019c):回転映像を用いた立体視ビュアーの構築 -教育訓練の展開と実務への応用-,職業能力開発研究発表講演会講演論文集,27,30-J-5.
田辺誠司・藤田一郎(2004):両眼立体視の脳内表現,日本神経回路学会誌,11,2,64-73.
植木岳雪・酒井彰(2007):5万分の1地質図福「青梅」,地質調査総合センター,産業技術総合研究所.
渡邉一弘(2019):職業大でのドローン撮影,未公表.