JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT19] 地理情報システムと地図・空間表現

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)

[HTT19-P05] ドローンを用いた町民による災害初動の状況把握:広島県神石高原町における地産地防プロジェクト

*内山 庄一郎1 (1.国立研究開発法人防災科学技術研究所)

キーワード:ドローン、町民の担い手、災害初動、状況把握

防災基本計画(2019年5月一部修正)では、発災後の災害応急対策において、内閣府などで構成されるISUT(Information support team)により、必要に応じて災害情報の集約・地図化を行い、地方公共団体等の災害対応を支援することが定められた(中央防災会議,2019)。国が運用するこうした防災情報システムにはWeb-GISが利用されており、その情報収集の方向性は、災害情報の三角形(内山、2020)の上層から下層に向かって災害情報収集の手を伸ばすイメージである.しかし、こうした第一(国)・第二(都道府県)階層を中心とした情報共有体制の構築は始まったばかりであり、災害情報の三角形を一気通貫する共通システムが整備されていないなど、課題も多い。加えて、アナログ情報が主体の第三(自治体)・第四(個々の現場)階層では、特にISUTが活動するような大規模災害の場合ほど、被災した個々の現場の数が多く、すべての個所の確認や被害集計の完了までに相当な時間を要している。国レベルの防災情報システムの枠組みにおけるこうした課題のうち、本研究では、情報収集の効率的な手段が未整備である第三・第四階層に着目し、その対応について議論を行うものである。
こうした背景の中、本研究では、広島県の神石高原町において「地産地防プロジェクト」を実施した。このプロジェクトでは、地元町民の担い手による自律的なドローン運航を目指し、担い手自身による災害直後の被災個所のオルソ画像マッピングと自治体との情報共有について、実践的なトレーニングを行った。災害状況把握には,オルソ画像を自動作成するDroneDeploy(クラウドソフトウェア)と、本プロジェクトで独自に開発した「比較アプリ」(固有名称を付していない)へのオルソ画像のアップロードによって、災害前後のオルソ画像の比較、および災害現場から役場への直接的な情報共有を実施した。
本プロジェクトでは、実証実験から社会実装への展開における課題、つまり実証実験関係者である専門家の手を離れた後に、ドローンの活用が社会に定着しない課題に対し、町民の担い手を育成するというアプローチで解決を試みた。この効果を明らかにするためにも、2020年度以降の同町の担い手の活動に注目していく。これに関連して、担い手の運航機会を創出するために、ドローンを活用した防災訓練など、ドローンの日常化に向けた活動を提案した。今後は、災害初動時の状況把握を町の防災スキームへ組み込むなど、町と担い手が連携して実社会で活動できる体制を作っていく必要がある。

参考文献
内山庄一郎(2020):ドローン活用ガイド2020 次代のスタンダードへ.東京法令出版.