JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG44] 福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態

コンビーナ:津旨 大輔(一般財団法人 電力中央研究所)、高橋 嘉夫(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、恩田 裕一(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、北 和之(茨城大学理学部)

[MAG44-07] 東日本における各河川中底質堆積物のセシウム137動態の分析

*恩田 裕一1Chen Tang1Gao Xiang1Takeuchi Yukio2谷口 圭輔2栗原 モモ3廣瀬 勝巳1 (1.筑波大学アイソトープ環境動態研究センター、2.福島県環境創造センター、3.量子機構 放医研)

キーワード:セシウム濃度、河川、堆積物、浮遊砂

2011年9月から2017年1月までの東日本地域全域において,環境省採取の461箇所に及ぶCs-137濃度の河川底質土砂および筑波大学及び福島県が採取した浮遊土砂セシウム濃度の時間的傾向を調査した。調査にあたっては,セシウム濃度における粒度分布の影響を除外するために,粒度補正を行った。また,一部の場所では,セシウムの浮遊土砂濃度と,溶存体のの放射能濃度も比較した。
それらの解析の結果,セシウム137濃度がほとんどのサイトで研究期間を通じて減少し,平均減少率λが2013-2018年の期間で約0.168であることを示した。一部のサイトでは,増加傾向または大きな減少率が見られが,これらの場所は汚染度の低い集水域(5万Bq/m2未満)に限定されていることが明らかになった。また,底質の粒子サイズ補正Kd値(固液分配係数,Kdac)を定義することにより,粒子サイズごとの溶存態と懸濁態の旧脱着状況を調査したところ,多くの地点では約10-4〜10-5 kg/Lを示したが,こちも低汚染流域(集水域インベントリが50 kBq/m2未満)の場合は大きく異なる結果を得た。また,海岸近くなどの特定のサイトを除くほとんどのサイトでは,粒子サイズが補正されたセシウム濃度の浮遊堆積物と底質堆積物は同様の値を示した。これらのデータは,福島の放射性降下物の影響を受けた河川環境における,溶存放射性核種と底質界面層との相互作用の速度と吸脱着プロセスを解明するために,溶存セシウムの放射能濃度が重要であることがわかった。