[MAG44-P12] 阿武隈川の高水敷における137Csの蓄積と再移動
★招待講演
キーワード:阿武隈川、高水敷、土砂動態
出水イベント時には、河川を通じて土砂とともに137Csが輸送され、その一部は高水敷に蓄積し、後続の出水イベント時の二次汚染源となる。本研究では、高水敷における137Cs蓄積・再移動プロセスを明らかにするため、阿武隈川の高水敷6地点において137Csのインベントリーおよび深度分布を調べた。二本松市安達ケ原(NIH)、福島市黒岩(KUR)、伊達市伏黒(FUS)、丸森町舘矢間(MAR)、角田市枝野(KAK)、岩沼市河口部(Mouth)の高水敷において、堆積物の柱状コアを採取し、137Cs濃度の分析を行った。2018年10月の採取・分析の結果、各高水敷における平均137Csインベントリーは、NIHで150 kBq m-2 (n = 2)、KURで600 kBq m-2 (n = 3)、FUSで490 kBq m-2 (n = 2)、MARで270 kBq m-2 (n = 2)、KAKで190 kBq m-2 (n = 2)、Mouthで40 kBq m-2 (n = 1)であった。これらの値は第6次航空機モニタリングに基づく137Csインベントリーに比べて、1.2~9.1倍高い値であり、二次的に137Csが蓄積したことが示唆された。複数点のコアサンプリングを行った高水敷では、河川から遠い地点ほど、137Csインベントリーが高く、堆積物の137Cs濃度の最大値が大きくなる傾向が見られた。2019年10・11月の採取・分析の結果、平均137Csインベントリーは、NIHで180 kBq m-2 (n = 2)、KURで540 kBq m-2 (n = 2)、FUSで410 kBq m-2 (n = 1)、MARで120 kBq m-2 (n = 2)、KAKで420 kBq m-2 (n = 3)、Mouthで46 kBq m-2 (n = 1)であった。2018年に比べて、137Csインベントリーには大きな違いはなかったが、堆積物中の137Cs深度分布に大きな変化が見られた。以上の結果から、2019年の台風19号にともなう洪水によって多量の137Csが再移動したと考えられる。