[MGI39-05] ニュートリノ物理の統計学と地球科学的手法の葛藤と融合
★招待講演
キーワード:統計手法、ニュートリノ
カムランド実験における地球ニュートリノ観測は,新しい観測手段を地球科学にもたらしただけではなく,それぞれ独立に発展してきた素粒子物理学と地球科学という二つの全く異なる学問分野を結びつける機会となった.観測対象が量子力学によって決定される素粒子実験では,観測値に対して本質的に確率的で厳密な統計モデルが適用でき,すべての結論が確率的な言語で記述される.一方で現実の複雑さと向き合う地球科学においては,厳密な確率分布を書き下すことは現実的に不可能であり,確率は主観性の入った近似モデルであったり,仮定モデルであったり,時にはそれが何かを気にせずに使われていたりする.このため,地球ニュートリノの現実的議論が始まった15年前においては,地球科学モデルはニュートリノモデルの構築に使うことはできず,また,ニュートリノの観測観測結果が出ても,そこからの帰結を整合的な形で書き下すことができなかった.この講演では,地球ニュートリノを例に,素粒子実験分野における厳密で特異な統計学を紹介し,また,最近の地球科学との融合の試みとそれによるいくつかの新しい知見と視点[1]を概観する.
[1] N. Takeuchi et al., "Stochastic modeling of 3-D compositional distribution in the crust with Bayesian inference and application to geoneutrino observation in Japan", Phys. Earth Planet. Inter. 288 (2019) 37-57
[1] N. Takeuchi et al., "Stochastic modeling of 3-D compositional distribution in the crust with Bayesian inference and application to geoneutrino observation in Japan", Phys. Earth Planet. Inter. 288 (2019) 37-57