JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI39] データ駆動地球惑星科学

コンビーナ:桑谷 立(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、長尾 大道(東京大学地震研究所)、上木 賢太(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、伊藤 伸一(東京大学)

[MGI39-07] 短期降雨予測へのクープマン作用素解析の応用

*宮本 崇1Zheng Shitao1阿部 雅人2清水 慎吾3加藤 亮平3岩波 越3 (1.山梨大学、2.株式会社BMC、3.防災科学技術研究所)

キーワード:短期降雨予測、クープマン作用素解析、非線形動的現象、データ駆動解析

降水予測精度の向上は,現在も気象学上の主要な課題の一つであり,気象災害の軽減の観点からも重要である.降水予測の2大手法である数値予報手法と運動学的外挿手法においては,それぞれスピンアップの問題のために短時間のリードタイムでは予測精度が落ちること,定常性の仮定のために雲の発達・衰弱を原理的に表現できないといった問題があり,このため30分から1時間後のリードタイムでの降水予測精度の向上が特に大きな課題の一つと考えられている.

このような背景の下で,データ駆動型手法による降水予測手法の開発が近年の潮流の一つとなっているが,同手法においては物理的現象に対する知見の反映性や計算過程の解釈性といった課題も認識されている.そこで本研究では,こうした課題に対処するために,近年に提案されたデータ駆動型手法の一種であるクープマン作用素解析に基づいた新たな降水予測手法を提案し,その有効性について基礎的な検討を行った結果を報告する.クープマン作用素解析は,非線形的な動的現象の時間発展の性質をデータから再現・予測する手法の一つであり,解析理論の背後に現象の因果的な法則を仮定している点において,物理現象の予測に適したデータ駆動型モデルである.

クープマン作用素解析は,動的な現象を時間領域で発達・減衰しながら振動する複数の空間モードに分解し,各モード特性を観測データから取得する方法である一方で,空間的な移動を伴う過渡的な現象への適用が原理的に難しかった.そこで本研究では,気象状態の時間発展を大域的な空間移動と状態の発展・減衰に分解し,前者を運動学的に,後者をクープマン作用素解析によって予測する手法を提案し,同手法を用いてXRAINにおける現在までの観測記録に基づいて一定時間先の降水状態を予測する数値実験を行った.実験結果からは,持続予測や単純な運動学的外挿処理による予測といった基礎的な比較対象に加え,深層学習を用いた降水予測モデルであるConv-LSTMによる予測結果に比較して,提案手法の予測精度が高いことが確認された.