JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI39] データ駆動地球惑星科学

コンビーナ:桑谷 立(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、長尾 大道(東京大学地震研究所)、上木 賢太(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、伊藤 伸一(東京大学)

[MGI39-P03] 岩石組成の統計的特徴量の東西比較による、日本列島島弧の地球化学形成過程の理解

*原口 悟1上木 賢太2岩森 光1 (1.東京大学地震研究所、2.海洋研究開発機構)

キーワード:地球化学データベース、日本列島地殻化学組成、東北・西南日本比較、統計量

大陸地殻の存在は、太陽系内の岩石惑星の中でも、地球に特有の要素である。このため、大陸地殻の化学組成やその成長過程を明らかにすることは、地球システムの進化を考える上で重要である。この中で、沈み込み帯でのマグマ活動による島弧地殻の成長と、プレート移動による付加体の形成が、現在の大陸地殻成長の主要素と考えられている。この中でも、日本列島は、飛騨帯、領家帯等、古生代以降の複数の段階の活動による珪長質深成岩体を主とした地殻が分布しており、さらには現在伊豆弧の衝突による「地殻の付加」が起きている、「島弧地殻の成長」を考える上で最適なフィールドである。このような地域性に基づく、地殻化学の議論は、地殻の成長プロセスを理解するため、さらに沈み込み帯におけるダイナミクスの理解を考えるために必要である。
本研究で用いる、日本列島地殻化学組成のデータベースは、DODAIデータベース(Haraguchi et al., 2018)を基とする。DODAIデータベースは、日本列島内の地球化学分析データに、高精度の位置座標(経緯度、標高)を付加したデータベースである。同データベースより、地殻構成要素と考えられる岩相の化学組成と位置データを抽出した。岩相区分は、Takeuchi et al. (2019)に基づいた。地域ごとの化学組成を比較し、さらに形成プロセスの違いを議論するために、本研究ではDODAIの位置情報を利用することで、糸魚川―静岡構造線を境として地球化学データを東北日本と西南日本に区分した。それぞれの区分の化学組成を比較するため、元素ごとのヒストグラムを製作するとともに、各種の統計値(平均、中央、最頻値、分散、歪度、尖度)を計算した。
日本列島基盤岩の地質分布では花崗岩質岩石が卓越するため、全地殻の化学組成分布にも花崗岩の要素が強く現れているが、東北日本と西南日本の間には、全地殻だけでなく、地殻を構成する各岩相でも多くの元素で組成差が認められた。西南日本の岩石は多くの元素でより分化した組成を示す一方、東北日本の岩石は、K2O, Rb, HREEが低く、CaOとSrが高い特徴を示す。統計量も、西南日本の岩石は東北日本のものよりも、分散と歪度が大きく、尖度が小さい。本研究では、これらのデータ比較から日本列島地殻の組成分布の地域性を定量的に比較するとともに、日本列島地殻の形成過程を考察する。

参考文献
Haraguchi et al. (2018) J. Geol. Soc. Japan 124, 1049-1054
Takeuchi et al. (2019) Phys. Earth Planet. Inter. 288, 37-57