JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI39] データ駆動地球惑星科学

コンビーナ:桑谷 立(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、長尾 大道(東京大学地震研究所)、上木 賢太(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、伊藤 伸一(東京大学)

[MGI39-P04] 機械学習を用いた玄武岩起源変成岩の原岩化学組成および物質移動量の推定

*松野 哲士1宇野 正起1岡本 敦1土屋 範芳1 (1.東北大学)

キーワード:機械学習、岩石流体反応、変成作用、物質移動量、原岩推定

岩石や土壌などから得られる地球化学組成データは,多数の元素濃度,同位体比組成などからなる数十次元の多次元データであり,岩石-流体反応や風化,汚染などの地圏環境に関する様々な地球化学プロセスが記録されている. 我々が手にできる「現在の」岩石組成は原岩が地球化学プロセスの影響を受けた物である. そのため,「現在の」岩石組成から地球化学プロセスを評価するには,その原岩組成を定量的に推定する必要がある.

こうした原岩推定に関する従来の研究は,判別図による原岩の種類の判別がなされているものの,原岩組成の定量的な推定は行われていない. 一方,近年,プログラミング言語や機械学習の技術的進歩によって地球化学分野においても機械学習の適用例が増えており,地球化学組成データによる判別問題において高い判別率を出した先行研究が存在する. (e.g., Kuwatani et al., 2014; Harsterok et al., 2019) しかしながら,地球化学組成データの定量的な推定問題において機械学習が適用された例はなく,新たな手法を確立する必要がある.

本研究では玄武岩起源の変成岩を対象とし,その原岩である玄武岩の組成濃度を推定することにより,地球化学プロセスを定量的に評価することを目的とした. 変成岩の地球化学プロセスとしては風化作用・変成作用が挙げられ,これにより物質移動する移動元素はRb, Ba, Sr, Ceなど,物質移動しない不動元素はNb, La, P, Nd, Zr, Ti, Yなどが挙げられる.(e.g., Ludden 1979; Uno et al., 2014; Kessel et al., 2005) そのため,Rb, Ba, Sr, Ceを移動元素,Nb, La, P, Nd, Zr, Ti, Yを不動元素と定義した. PetDBから機械学習モデルの教師データとして変成岩の原岩である玄武岩化学組成濃度を引用し,入力変数を不動元素濃度,出力変数を移動元素濃度とする機械学習モデルを構築した. 不動元素濃度は変成岩と原岩において変化しないため,機械学習モデルに「変成岩の不動元素濃度」を入力変数として与えることで「原岩の移動元素濃度」を推定することが可能となる。機械学習のアルゴリズムとしては決定木のアンサンブル法であるLightGBMを用いた.

その結果,原岩の Rb, Ba, Sr, Ce濃度を10%-20%の誤差で推定する決定木による原岩組成推定モデルを構築することが出来た. 実際に変成岩を適用した場合,「変成岩組成濃度」と「原岩組成推定濃度」に有意な差が導かれ,この有意な差は地球化学プロセスによる物質移動量であると考えられる. 以上より,LightGBMにより構築された不動元素濃度から移動元素濃度を推定する機械学習モデルを構築することが出来る. また,変成岩組成濃度データに適用することで,地球化学プロセスを定量的に評価することが可能である.