JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS01] 津波堆積物

コンビーナ:石村 大輔(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理学教室)、千葉 崇(秋田県立大学生物資源科学部)、山田 昌樹(信州大学理学部理学科地球学コース)、石澤 尭史(東北大学 災害科学国際研究所)

[MIS01-08] インドネシア,アナク・クラカタウ火山の噴火(2018年12月22日)で形成され保存された津波堆積物

*西村 裕一1Purna Putra2Hari Nugroho2Eko Yulianto2千葉 崇3 (1.北海道大学大学院理学研究院、2.ジオテクノロジー研究センター,インドネシア科学院、3.秋田県立大学生物資源科学部生物環境科学科)

キーワード:アナク・クラカトア火山、津波堆積物、堆積物の保存、津波石、Ujung Kulon国立公園

2018年12月22日,インドネシアのアナク・クラカタウ火山が噴火し,ジャワ島のバンテン州で最大約15mの津波が発生した.この津波に伴い,同地域の沿岸に多くの津波石が打ち上げられ,また砂質の津波堆積物が形成された.インドネシア科学院(LIPI)は津波発生約1週間後に津波痕跡の調査を実施し,地表に残された堆積物の産状を記録している.本研究では,1年後の2019年12月から2020年2月にかけて現地の津波痕跡の再調査および追加調査を行い,熱帯のサンゴ礁海岸における津波堆積物の風化と保存の様子を確認した.珊瑚片を主体とする津波堆積物の層厚や粒度特性は1年経過後もよく保存されていた.最上位に再堆積と思われるシルト層が形成されその上に新しい土壌ができつつある場所もあった.この地域で堆積物がよく保存される理由に,植生の回復が早いことがあげられる.有孔虫や珪藻といった微化石については,土壌特性も調べながらそれぞれの保存状態を確認した.また,Ujong Kulon 国立公園内で初めて津波と津波堆積物の調査を実施した.公園内には集落や道路がなく,観光客などの立ち入りも制限されているため自然環境下での津波堆積物の形成と保存過程を確認することができる.津波堆積物は林の中ではすでに土壌に覆われ,海岸から500m以上内陸の遡上限界付近でもパッチ状の細粒砂としてよく保存されていた.また,1883年に起きたクラカトア火山の津波堆積物の可能性がある珊瑚からなる津波石が2018年津波の遡上限界より内陸に残されていることもわかった.なお.本研究は,国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)の支援を受けて実施した.