JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS02] Environmental, socio-economic and climatic changes in Northern Eurasia

コンビーナ:Pavel Groisman(NC State University Research Scholar at NOAA National Centers for Environmental Information, Asheville, North Carolina, USA)、Shamil Maksyutov(National Institute for Environmental Studies)、Evgeny P Gordov(Institute of Monitoring of Climatic and Ecological Systems SB RAS)、谷田貝 亜紀代(弘前大学大学院理工学研究科)

[MIS02-03] 中国東北部における着氷性現象に関する気候学的研究

白 洋1、*檜山 哲哉2藤波 初木2 (1.名古屋大学大学院環境学研究科、2.名古屋大学宇宙地球環境研究所)

キーワード:着氷性の雨、着氷性の霧雨、着氷性の霧

着氷性現象は冬季に発生する雨氷現象である。着氷性現象には、着氷性の雨、着氷性の霧雨、着氷性の霧がある。2008年1月上旬から2月上旬にかけて、中国東南部で大規模な着氷性の雨が発生し、莫大な経済損失をもたらし、多数の人命が失われた。また2010年の冬季には、中国東北部で大規模な着氷性の雨が発生し、この地域の空港と高速道路が数多く閉鎖された。このように、着氷性現象は人間活動に多大な影響をもたらすため、着氷性現象がどのような気象条件で発生するのかを知ることは非常に重要である。従来、着氷性の雨についての研究は数多くあり、着氷性の雨の発生メカニズムについては理解が進んでいた。一方、着氷性の霧雨と着氷性の霧に関する研究は非常に少なかった。また、従来の研究は事例解析研究が中心であり、気候学的な特徴を明らかにする研究は行われていなかった。
そこで本研究は、中国東北部の4都市(哈爾浜・長春・瀋陽・大連)を対象に、着氷性現象の発生時における大気循環場を解析することを通じて、これらの地域で発生する着氷性現象の気候学的な特徴を見出すことを目的とした。使用したデータは、上記4都市の空港で2005年から2018年までの14年間に得られた気象データと、ERA-Interim大気再解析データである。空港の気象データは1時間または30分毎に観測されたものであり、本研究では、風向·風速、気温、露点温度を用いた。そして、連続3時間以上発生した着氷性現象を1事例と定義して解析を行った。
解析期間中、着氷性の雨と着氷性の霧雨は1事例のみ発生していた。一方、着氷性の霧は数多く発生し、全事例件数(4ヶ所×14年間)を合計すると238事例であった。ERA-Interim大気再解析データを用いて着氷性現象が引き起こされたメカニズムの解析を行ったところ、瀋陽において着氷性の雨が発生した事例では、融解過程によって着氷性の雨が発生していることが明らかとなった。これは、中国東南部で大規模に発生した過去の事例と同じメカニズムである。大連で発生した着氷性の霧雨の事例では、降水によって地表付近が湿った環境であったところに冷涼な大気が流入し、靄が着氷性の霧雨に変化したことを明らかにした。低気圧通過後、移動してきた高気圧がもたらした寒気が、着氷性の霧雨の発生に大きく関与していると考えられる。
発生事例数の多い着氷性の霧は、夜間から朝方にかけて発生した事例が多く、地表面の放射冷却が着氷性現象を引き起こす主要因であったと考えられる。着氷性の霧の発生日には、平均場(14年間の気候値)と比較して日本付近が高気圧偏差を示しており、西高東低の冬型の気圧配置が弱まる傾向であった。それゆえ、中国東北部では、北寄りの風が弱まっていた。さらに、日中まで着氷性の霧が持続した事例においては、日本付近の高気圧偏差が強まっていることが明らかとなった。