JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS06] ダスト

コンビーナ:石塚 正秀(香川大学)、黒崎 泰典(鳥取大学乾燥地研究センター)、関山 剛(気象庁気象研究所)、長島 佳菜(海洋研究開発機構 地球環境観測研究開発センター)

[MIS06-02] オーストラリア起源の鉱物ダスト発生量の過大評価がエアロゾル水溶性鉄濃度に与える影響

*伊藤 彰記1Perron Morgane2Proemse Bernadette2Strzelec Michal2Gault-Ringold Melanie2Boyd Philip2Bowie Andrew2 (1.海洋研究開発機構、2.タスマニア大学)

キーワード:鉱物ダスト、オーストラリア森林火災、気候変動

鉱物ダストは、海洋表層において希少な栄養塩(鉄)濃度を変化させることで、植物プランクトン(一次生産者)を起点とした食物連鎖を通して海洋生態系および気候へ影響を与えると考えられる。しかし、南半球における鉱物ダスト発生量および鉄を含んだエアロゾルの溶解率について、定量的にはよく理解されていない。



標準実験では、全球エアロゾル化学輸送モデルで理論物理を基礎とした鉱物起源エアロゾル粒子の発生手法を用いて、鉱物起源鉄発生量を算出した。特徴として、発生量を算出する際に、グリッドごとに発生量を補正するためのソースファンクションを用いていない。それに対して、本研究では、全球エアロゾル化学輸送モデルへ逆推定モデルを適用することで、大気中の鉱物ダストに含まれる鉄濃度を観測データとよく一致するようにエアロゾル鉄濃度を推定した。


逆推定値では、オーストラリア付近で観測されたエアロゾル鉄濃度の空間分布を良く再現した。その結果、溶存鉄濃度の再現性が向上し、それに付随して高い鉄溶解率を再現できた。逆推定値の結果から植生燃焼が、主要な溶存鉄発生源となることを明らかにした。一方、モデルの過小評価からモデルで考慮されていない発生源や発生過程が依然として見られた。特に、南大洋域では、観測データ数としては少ないながらも、大気モデルでは再現できないほど、エアロゾル中で高い溶存鉄濃度を示す観測データが得られている。そのため、南半球域から大気を通して南大洋へと供給される溶存鉄の動態に関する理解を深める必要がある。