JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] Interdisciplinary studies on pre-earthquake processes

コンビーナ:服部 克巳(千葉大学大学院理学研究科)、Dimitar Ouzounov(Center of Excellence in Earth Systems Modeling & Observations (CEESMO) , Schmid College of Science & Technology Chapman University, Orange, California, USA)、劉 正彦(国立中央大学太空科学研究所)、Qinghua Huang(Peking University)

[MIS09-P04] WLP-FDTD法を用いた地震に伴うULF帯地殻内電磁波伝搬シミュレーション

*木村 亮太1安藤 芳晃1服部 克巳2 (1.電気通信大学大学院情報理工学研究科、2.千葉大学大学院理学研究科)

キーワード:ULF電磁波、WLP-FDTD、地震電磁気学

これまで多くの地震に関連したUltra Low Frequency (ULF)帯の電磁放射観測の報告がなされている。これらの多くは、ULF放射がノイズレベルを超えて観測できたか、あるいはノイズレベルとしても信号処理により異常が検出されるか等が問題の中心となっている。しかしながら実際の観測波形は、ULF放射の大小とともに伝搬路の影響を含むため、地表面で観測される波形はこれらを考慮する必要があると言える。

 そこで本研究ではWeighted Laguerre Polynomial Finite-Difference Time-Domain (WLP-FDTD)法を用いた地殻内電磁波伝搬の効率的な数値シミュレーション法を確立し、それを用いてこれまでのULF放射の報告から、地震の規模とシミュレーションによって推定した放射強度の相関について調査を行う。WLP-FDTD法は、時刻を変数とする重み付きLaguerre多項式で各点の電磁場を展開、空間的には有限差分化したMaxwell方程式に代入することで、展開係数に関する連立一次方程式に帰着する手法である。時刻更新型ではなく、反復計算することで展開次数を上げて精度を高める手法となっている。時刻更新型でないことから、低周波の応答を効率的に求めることができ、2次元解析であれば従来のFDTD法より数10〜数100分の一程度の計算時間で解析が可能である。

 比較的震源と観測点が近く、比較的広い周波数にわたって多数の周波数帯で観測されたLoma Prieta地震(1989年アメリカ)を基準の地震として採用する。この地震に関するULF帯観測結果と、震発生後に行われたMT観測による地殻の導電率構造から、WLP-FDTD法でのシミュレーションを用いて波源の周波数特性を推定した。

 次に、求めた波源の周波数依存性はいずれの地震でも同じであり、その強度のみが変化すると仮定して、各地震でのULF放射の強度を求めた。用いた地震はSpitak地震(1988年アルメニア)、Biak地震(1996年インドネシア)、Alum Rock地震(2007年アメリカ)である。それぞれの観測における帯域幅が異なっているが、WLP-FDTD法によるシミュレーションから観測に用いた帯域での応答を導出、観測された磁場強度となる波源の強度を推定した。シミュレーションにおいて、観測地周囲で行われたMTの結果から、とり得る導電率についての範囲を定め、波源の強度の範囲を推定している。特に、海は導電率が高く影響が大きいことから、周囲に海がある場合はその地形情報から海水の導電率構造を設定している。また、Biak地震については直接の波形は観測されておらず、平均化と偏波比から地震に関連する放射と推定されているので、その磁場強度については「ノイズレベル以下だが十分に小さいレベルではない」ものとし、S/Nが-3dB程度と仮定した。

 上記から各地震の規模(マグニチュード)と波源の強度の関係を求めたところ、指数関数的な相関があることが明らかとなった。