JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 地球掘削科学

コンビーナ:黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系)、Clive Robert Neal(University of Notre Dame)

[MIS11-P09] 31億年前の縞状鉄鉱層掘削:豪州ピルバラ海岸グリーンストーン帯におけるDXCL掘削

*清川 昌一1伊藤 孝2池原 実3山口 耕生4石川 浩平1竹原 真美5堀江 憲路5 (1.九州大学大学院理学研究院地球惑星部門、2.茨城大学教育学部、3.高知大学海洋コア総合研究センター 、4.東邦大学 理学部, NASA Astrobiology Institute.、5.国立極地研究所 )

キーワード:縞状鉄鉱層、グリーンストン帯、太古代、シデライト、マグネタイト

DXCL掘削は2007と2012年に行われ,それぞれ200mのコアを取得している(Kiyokawa et al. 2012).ピルバラ海岸線に分布する31億年前の表層露頭は地面から50mほど風化しており,化学分析に耐えられる試料を取得するには陸上掘削が不可欠である.西オーストラリアの地質調査所で半割をおこない,コア半分を日本に持ち帰って記載・分析を行ってきた.

DXCL掘削は,ピルバラ海岸グリーンストーン帯のうち海岸線に低変成度で保存されている火山岩から堆積岩の地層であり,年代測定により32億年から31億年前に堆積した海底堆積物である.下位から,Regal, Dixon Island, Port Robinson basalt, Cleaverville Formationと重なり,構造変形の後に約30億年前の浅海堆積物が不整合で重なる.特にCleaverville Formationには太古代の縞状鉄鉱層(BIF)を含んでおり,酸素がない時代の鉄鉱層堆積システム(eg. Konhauser et al., 2017)を考える上で重要な場所である.

掘削は,Dixon Island 層とCleaverville 層について4本のコア(DX, CL1, CL2, CL3)を取得している.本発表では特にピルバラグリーンストーン帯を代表する31億年前のBIFを含むCL3コアについての記載・顕微鏡観察を中心に,酸素のほとんど無いとされる31億年前の海底に残された地層状態を考察する.

本地域はD1およびD2 の変形によりCleaverville層中には褶曲(軸が水平なF1および軸が垂直はF2)が識別されている.部分的に小規模褶曲は見られるが,層内の黒色頁岩中のクロスラミナ,シデライトおよびマグネタイトの級化組織により,南部ほど上位を示す.

Cleaverville層は層厚が約500mあり,下位に黒色頁岩部層,上位にBIF部層からなる.黒色頁岩は,有機物に富むシルト質泥岩で,数㎝の薄い細粒砂岩層を挟んでくる.それぞれの地層は10-20cmの厚さで,上位ほど細粒砂岩層の薄層の頻度が増える.陸上露頭で観察される凝灰岩の層は,コアでは確認できていない.BIF部層は,3つのユニットに区分でき,1)シデライトBIF:白色チャート・粘土物質ラミナ層と均質シデライト層の互層,2)マグネタイトBIF:チャート・マグネタイトラミナ層と均質シデライトの互層が交互に繰り返す地層,3)黒色頁岩-シデライト層:細かなラミナを伴う頁岩と緑色シデライト互層,からなる.

黒色頁岩部層からBIF部層には供給粒子の変化が急激に起こっており,黒色頁岩に含まれる細粒石英や火山起源の長石粒子はなくなる.BIF部層における層状構造はシデライト BIF,マグネタイトBIFとも互層の厚さ変化は類似しており,マグネタイトラミナが見られるところは,シデライトBIF中の粘土ラミナの部分であることが明らかになった.また,マグネタイトは全て自形である.つまり,ラミナ形成後,シデライトBIFの粘土ラミナ相当部で続成作用時にマグネタイトが形成し,濃集してラミナを形成したと思われる.BIF部層は全ユニットでシデライトがみられ,特に白色チャート層には自形のシデライト結晶が広く見られており,初期続成時にシデライト結晶が形成している.堆積構造は,上位の黒色頁岩-シデライト層にみられ,バイオマット状の波打った薄い有機物を含むラミナ組織がみられる.層厚の変化する均質緑色頁岩層は,緑泥石とシデライトからなり,ラミナはなく,他の粒子も含まれない.本層は陸上では,チャート・鉄鉱層と互層する赤色/白色の粘土層に対比され,陸上では側方に50-100mほどで厚さの変化(80cm-10cm)が見られる.残念ながらその堆積起源や堆積様式は不明である.

BIF部層中は,シデライト形成に関連する続成作用の影響が強く初期堆積組織が変化している可能性が高い.唯一,上部の黒色頁岩-シデライト層のラミナにバイオマット状の初期堆積組織の可能性が残っている.これらの組織は堆積時に海底表面で生物活動(例えば無酸素状態での鉄酸化細菌)を示す可能性が考えられる.