JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 地球掘削科学

コンビーナ:黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系)、Clive Robert Neal(University of Notre Dame)

[MIS11-P10] 日本列島内陸原位置地殻応力測定ー防災科研観測井コアへのコア変形法の適用-

*小村 健太朗1船戸 明雄2伊藤 高敏3 (1.防災科学技術研究所、2.深田地質研究所、3.東北大学流体科学研究所)

キーワード:コア変形法、原位置地殻応力、岩石コア、日本列島内陸

地震発生過程やテクトニック変動を理解する上で,重要な物理量である地殻の原位置の絶対応力に関するデータは,陸域においても,数少ない状況にある.主要な原位置地殻応力測定手法では,掘削と特殊な孔内計測が必要で,広域にわたる系統的な測定が難しいという要因がある.本研究では,掘削で採取された岩石コアの計測から原位置地殻応力値を推定する方法である「コア変形法(DCDA法, Diametrical Core Deformation Analysis法)」を既存の防災科研地震観測井の岩石コアに適用して,広域で原位置地殻応力を推定することを試みた.コア変形法では,掘削孔内で特殊な計測をする必要がなく,コア周にそった形状を計測するとともに,応力値の推定には岩石の弾性定数が,応力方位の推定には岩石コアの方位つけが必要である.既存の岩石コアでも,すでに,深部岩石コアについては適用できることが示されている.
今回,防災科研の7地点のHi-net観測井で深度が100m~200m(1地点だけ2000m)から採取した硬岩の岩石コアを利用した.無定方位の岩石コアのため,応力方位の測定できなかった.Funato and Ito (2017, IJRMMS)で設計された装置でコア外周にそった直径を測定した.測定された岩石コアは,採取後,10年以上経過したものではあるが,外周にそって直径がサインカーブ状に変化した.これは,岩石コア断面が応力開放にともない楕円状に弾性変形していることが推測され,コア変形法の適用可能性がみられた.地殻応力値を求めるのに,岩石コアの弾性定数のデータがないため,同じ掘削井で実施されたPS検層による地盤のP波速度,S波速度から,密度を仮定して計算される弾性定数を適用することを試みたところ,~10 MPaの差応力値となった.定性的には既存観測井岩石コアにコア変形法を適用して,広域的に原位置地殻応力を測定できる見込みのあることが示された.今後,室内岩石試験により,直接岩石コアの弾性定数を計測する予定である.