JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] XRFコアスキャナーが切り開く環境復元の新展開

コンビーナ:Huang Jyh-Jaan Steven(Institute of Geology, University of Innsbruck)、天野 敦子(産業技術総合研究所)、村山 雅史(高知大学農林海洋科学部海洋資源科学科)、汪 良奇(國立中正大學)

[MIS12-01] XRFコアスキャナー(ITRAX)で測定した臭素(Br)カウントを用いた、海底堆積物中の海洋起源有機炭素量の復元 -日本海堆積物を例として-

★招待講演

*関 有沙1多田 隆治2,3,4黒川 駿介4村山 雅史5 (1.信州大学 理学部、2.千葉工業大学 地球学研究センター、3.雲南大学、4.東京大学大学院 理学系研究科、5.高知大学 農林海洋科学部)

キーワード:XRFコアスキャナー、ITRAX、海洋起源有機炭素、日本海、IODP

海底堆積物中の海洋起源有機炭素量は、過去の海洋の生産性を復元する上で重要な情報となる。臭素(Br)は陸起源の有機物よりも海洋起源の有機物に多く含まれるため(Berg and Solomon, 2016)、海洋起源有機炭素量のプロキシとして使用できる可能性が指摘されていた(Ziegler et al., 2008)。

そこで本研究では、XRFコアスキャナーを用いて堆積物中のBrを測定し、海洋起源有機炭素量を推定することを試みた。分析には、有機物量が多く色が暗い層と、有機物量が少なく色がより明るい層がはっきりと観察される(Tada et al., 2015)、統合国際深海掘削計画(IODP)第346次航海で採取された日本海半遠洋性堆積物を用いた。

まず、高知大学のXRFコアスキャナー(ITRAX)を用いて半割コアを測定し、Brカウントを得た。次に、XRFコアスキャナー測定に使用した堆積物と同層準の堆積物を分取して乾燥・粉末化し、全有機炭素量(TOC)、全窒素量(TN)、炭素安定同位体比(δ13C)の測定を行なった。得られたTOCやδ13Cの結果から、海洋起源有機炭素量を計算した。

得られたBrカウントと海洋起源有機物量は良い相関を示した。この結果を基にBrカウントから海洋起源有機物量を推定する検量線を作成し、日本海堆積物のXRFコアスキャナー測定結果に応用した。その結果、第四紀(過去260万年間)の長期に渡る堆積物中の海洋起源有機炭素量の変動を、約50年の解像度で復元することができた。

本研究で提案する、XRFコアスキャナーで測定したBrカウントを用いて海洋起源有機炭素量を推定する手法は、高時間解像度で迅速に堆積物中の海洋起源有機炭素量を明らかにできるという利点があり、今後他地域の堆積物コアにも広く応用されることが期待される。