[MIS12-P03] 別府湾堆積物中に見られる年縞様構造の組成と経年変化
キーワード:別府湾、年縞、イベント層
大分県別府湾において災害や人間活動といった近代のイベントが堆積物にどのように記録されているか明らかにするために、2017年と2019年に、湾内の複数地点においてアシュラ式採泥装置、グラビティコアラーによる堆積物採取を行った。これらの試料は、高知大学海洋コア総合研究センターにてCTスキャン、半割、断面画像撮影を行った後、蛍光X線マイクロスキャナITRAXを用いた高解像度元素組成分析を行った。また年代決定のため、放射性Pb, Csの濃度変化を4cm間隔で測定した。
2017年調査では湾内の4地点でコア採取を行い、堆積物の深度分布を調べた。別府湾は湾口が水深最大50m、最奥部が水深70mの盆地状であるが、その最奥部にのみ、1セットの厚さが7mm程度で、半遠洋性軟泥で構成される葉理構造が見つかった。水深50m以浅では粗粒な構成要素が多く、葉理構造はほどんど見られなかった。ITRAXの分析結果およびその因子分析から、葉理は砕屑物の含有量変化によるものであることがわかった。この葉理の中に、とくに密度が高く、元素組成が他と異なる砕屑物層が存在する。これらの層準の一部は明灰色ないし赤褐色の砕屑物に富んだ薄層、すなわちマイナーイベント層として肉眼でも確認でき、砕屑物が通常時と異なる供給源から大量に流入したことを示唆している。これらの層は周辺地域で観測・歴史的に多発している洪水、地震、噴火等の災害を記録している可能性が高い(Kuwae et al., 2013, Yamada et al.,2017)。放射性Pb, Csの測定結果は、先行研究で知られている豊後水道地震起源と考えられるイベント層Ev-1a(Kuwae et al., 2013)と概ね矛盾しない年代値が得られた。また葉理の計数を行ったところ、葉理の保存が悪い区間に関しては葉理の平均厚さ6~7mmを内挿すれば、葉理の累積枚数がPb, Csから得られた年代と矛盾しないことがわかった。
約2年後の2019年9月に行った再調査では、2年間で新たな堆積がどの程度あるか確かめるとともに、2017年調査でカバーできなかった水・堆積物境界から210Pbが減衰しきる層準までの連続試料を得ることを目的とし、1.2m長のアシュラ式採泥装置を用いて、水・堆積物境界から深度約90cmまでの連続コア試料を得た。2017年と2019年の分析結果を比較したところ、2019年コアの最上部には2017年コアと比べて約2cmの新しい堆積物が存在することが確かめられた。これらの結果から、別府湾最奥部の葉理は季節毎に異なる物質が流入し、擾乱なく保存されることで形成される年縞堆積物である可能性が高い。またその生成要因としては、強雨による砕屑物の流入などが考えられる。葉理の保存は1960年前後を境に徐々に明瞭になっており、経済成長に伴う海洋環境の富栄養化によって海底の成層構造が強化された可能性がある。今後、2019年コアについても年代測定を行う予定である。
2017年調査では湾内の4地点でコア採取を行い、堆積物の深度分布を調べた。別府湾は湾口が水深最大50m、最奥部が水深70mの盆地状であるが、その最奥部にのみ、1セットの厚さが7mm程度で、半遠洋性軟泥で構成される葉理構造が見つかった。水深50m以浅では粗粒な構成要素が多く、葉理構造はほどんど見られなかった。ITRAXの分析結果およびその因子分析から、葉理は砕屑物の含有量変化によるものであることがわかった。この葉理の中に、とくに密度が高く、元素組成が他と異なる砕屑物層が存在する。これらの層準の一部は明灰色ないし赤褐色の砕屑物に富んだ薄層、すなわちマイナーイベント層として肉眼でも確認でき、砕屑物が通常時と異なる供給源から大量に流入したことを示唆している。これらの層は周辺地域で観測・歴史的に多発している洪水、地震、噴火等の災害を記録している可能性が高い(Kuwae et al., 2013, Yamada et al.,2017)。放射性Pb, Csの測定結果は、先行研究で知られている豊後水道地震起源と考えられるイベント層Ev-1a(Kuwae et al., 2013)と概ね矛盾しない年代値が得られた。また葉理の計数を行ったところ、葉理の保存が悪い区間に関しては葉理の平均厚さ6~7mmを内挿すれば、葉理の累積枚数がPb, Csから得られた年代と矛盾しないことがわかった。
約2年後の2019年9月に行った再調査では、2年間で新たな堆積がどの程度あるか確かめるとともに、2017年調査でカバーできなかった水・堆積物境界から210Pbが減衰しきる層準までの連続試料を得ることを目的とし、1.2m長のアシュラ式採泥装置を用いて、水・堆積物境界から深度約90cmまでの連続コア試料を得た。2017年と2019年の分析結果を比較したところ、2019年コアの最上部には2017年コアと比べて約2cmの新しい堆積物が存在することが確かめられた。これらの結果から、別府湾最奥部の葉理は季節毎に異なる物質が流入し、擾乱なく保存されることで形成される年縞堆積物である可能性が高い。またその生成要因としては、強雨による砕屑物の流入などが考えられる。葉理の保存は1960年前後を境に徐々に明瞭になっており、経済成長に伴う海洋環境の富栄養化によって海底の成層構造が強化された可能性がある。今後、2019年コアについても年代測定を行う予定である。