JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] アストロバイオロジー

コンビーナ:薮田 ひかる(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、杉田 精司(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、深川 美里(国立天文台)、藤島 皓介(東京工業大学地球生命研究所)

[MIS17-14] 成層圏微生物採取実験Biopauseプロジェクト

*大野 宗祐1三宅 範宗1石橋 高1河口 優子1奥平 修1前田 恵介1飯嶋 一征2梯 友哉2山田 学1山岸 明彦3山田 和彦2高橋 裕介4野中 聡2瀬川 高弘5福家 英之2吉田 哲也2松井 孝典1 (1.千葉工業大学、2.宇宙航空研究開発機構、3.東京薬科大学、4.北海道大学、5.山梨大学)

キーワード:生物圏界面、パンスペルミア、成層圏、微生物、気球実験

本研究は、地球生命圏の上端(これまで学術用語が存在しなかったため我々は”biopause”と呼んでいる)に関する研究である。地球生命圏の上端biopause、特に明確な境界面の有無やそれを決定するメカニズム、さらには地球生物圏が宇宙に向かって閉じているのか開いているのかについて理解する事が、本研究の主要な科学目標である。biopauseに関する理解は、地球型生命が存在するのが地球だけなのか、何故地球を研究するのか、何故宇宙の中で地球は特別な存在なのか、という地球惑星科学の根本的テーマを理解する上でどうしても避けて通れない。

これまでの研究から、成層圏での微生物の存在が知られており、これが地球生物圏の上端”biopause”に相当すると考えられる。ところが、先行研究では地上微生物の混入防止策が不十分なものも多いほか、散発的な試料採取と培養法での分析しか行われておらず、成層圏微生物の動態や全体像の把握には至っていない。

そこで我々は、成層圏微生物の全体像を把握することを目指し大気球による成層圏微生物採取実験Biopauseプロジェクトを行っている。2019年7月に、JAXA大樹航空宇宙実験場にて、Biopauseプロジェクトの第3回目の大気球実験を行った。成層圏生物圏の全体像と動態を把握することが、プロジェクトの大目標であるbiopauseの観測と理解の為に不可欠である。そのための重要なステップとして本年度実験では高度分布観測や多角分析を行うことを目標とした。

Biopauseプロジェクトの気球実験では、気球で成層圏まで上昇した後、気球からゴンドラを切り離し、パラシュートで降下する最中に、成層圏中に浮遊する微生物採取を行う。降下中に採取することにより、気球をはじめとする実験装置外壁に付着していた微生物の混入を劇的に軽減することができる。
2019年度の大気球実験において、実験装置一式は漁船により無事回収され、千葉工業大学惑星探査研究センターにて採取資料の分析が進められている。本講演では、本年度の大気球実験の最新の分析結果について紹介するとともに、Biopauseの理解へ向けた今後の展望について議論したい。