JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] アストロバイオロジー

コンビーナ:薮田 ひかる(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、杉田 精司(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、深川 美里(国立天文台)、藤島 皓介(東京工業大学地球生命研究所)

[MIS17-P11] ドレイク方程式における「原始生命が知的なレベルまで進化する確率fi」を、地球における大量絶滅の歴史から推定する

*津村 耕司1 (1.東京都市大学 理工学部 自然科学科)

キーワード:ドレイク方程式、地球外生命探査、大量絶滅

ドレイク方程式とは、銀河系内に存在する地球外文明の数を推定するための式である。最近の天文観測の発展によりドレイク方程式内のいくつかの項については精度の高い推定ができるようになったが、いくつかの項は未だに推測の域を出ない。その中の一つに、原始的な生命が知的なレベルにまで進化する確率fi がある。過去のfi の推定は悲観的なもの(fi ~0)から楽観的なもの(fi ~1)まで幅広い。
本発表では、我々が入手可能な唯一のデータである地球上の生命の大量絶滅史に基づきfi を推定する新たな手法について紹介する。地球生命はその誕生以来、環境の変化や隕石の衝突などの外的要因による様々な規模の大量絶滅を経験してきた。本研究では、地球生命が経験して来た大量絶滅の頻度分布がある確率過程に従った結果であると仮定し、地球生命がその誕生以来今まで「幸運にも絶滅しなかった確率」としてfi を推定する。大量絶滅の頻度分布は、顕生代(5億4000万年前~現在)における化石情報に基づき推定されたデータに基づく(Rohde & Muller 2005)。
顕生代における大量絶滅の規模の頻度分布は、対数正規分布とよく一致した(reducedカイ2乗~1)。ランダムな要因の積で表されるような現象は中央極限定理により対数正規分布となる。地球における大量絶滅は基本的には火山活動や隕石の衝突などのランダムな要因によると考えられるので、大量絶滅の規模の頻度分布が対数正規分布とよく一致したことは自然であると考えられる。得られた対数正規分布関数が、地球上の生命が絶滅する確率分布関数を表すと仮定すると、単位時間(今回のデータでは300万年)あたりに地球上の生命が絶滅しない確率 p p = 0.9985 +0.0012-0.0058 と求まる。T を知的生命まで進化する時間、ΔT を時間分解能(今回の場合は300万年)とすると、求めたい fi fi = pT/ΔT と書ける。最近の地質学的研究により、最初の生命の誕生は37−41億年前だと考えられている。ここで求めた地球上の生命が絶滅する確率分布関数がこの時代まで外挿できると仮定すると、41億年の地球生命史において fi = 0.13+0.52-0.13 (信頼係数99%)と推定される。これは、fi をデータに基づいて推定した初めての例である。fi p と T という2つの変数で表現されているため、系外惑星の環境下でなんらかの方法で p と T を推定することができれば、その惑星系におけるfi を推定することも可能である。