[MIS20-12] 3次元球座標系FDTD法を用いたVLF/LF帯大地-電離圏導波管伝搬の数値解析
キーワード:超長波/長波、有限差分時間領域法、電離圏、大地導電率、吸収境界条件
Very Low Frequency (VLF)/Low Frequency (LF)帯(3-300kHz)電磁波は大地と 電離圏の間を導波管伝搬することが知られている。この伝搬はD層で反射す ることから、地表面で受信することでD層電子密度を直接観測できることが 期待されているが、D層電子密度を同定するためには、精度のよい数値シミュ レーション法の確立が重要である。 VLF/LF帯伝搬を数値解析するには電離圏の電子密度不均質性から、有限差分型 の手法が適当である。そこで、本研究では有限差分時間領域 (Finite-Difference Time-Domain)法を用いたVLF/LF帯伝搬シミュレーション の確立を目的とする。大地や電離圏の構造から球座標系で定式化することが効 率的であることから、本研究では3次元球座標系におけるFDTD法を採用する。 本研究ではVLF/LF帯の送信局を波源とし、磁化プラズマである電離圏は異方性 を持つ導伝性媒質として定式化する。磁化プラズマは分散性媒質でもあるが、 送信局の周波数に相当する性質をいずれの周波数でも持つ非分散性と簡単化す る。この、電離圏は解析領域に対して十分広いことから異方性導電率を持つ媒 質を有限領域で打ち切る必要があり、本研究ではこのため球座標系において媒 質に関わらず適用できる吸収境界条件を開発した。具体的には更新する電磁場 として電界、磁界の他に電束密度を用いて、complex coordinate stretching を用いることで吸収境界条件を実現する。大地は比較的高い導電率を持つ媒質 であるが、計算量削減のため直接内部まで計算せず、表面インピーダンス法を 用いて計算する。導電性媒質を表面インピーダンスで定式化したときも分散性 を持つことになるが、こちらも送信周波数における一定値とする。 開発したVLF/LF帯伝搬シミュレータで、各種パラメタが伝搬に与える影響を調 査した。地磁気の方向を各点で任意に設定できるが、例えば中緯度での数 1,000kmの伝搬であれば一定方向としてもほとんど誤差が生じないことが分かっ た。一方、大地導電率については陸地と海では大きくことなることから伝搬路 上の地形から設定する必要があることが分かった。