JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS21] ジオパーク

コンビーナ:田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、尾方 隆幸(琉球大学島嶼防災研究センター)、大野 希一(島原半島ジオパーク協議会事務局)、有馬 貴之(横浜市立大学)

[MIS21-02] ビジターが共感するジオパークのストーリーをどのようにつくるか

*川村 教一1 (1.兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)

キーワード:思考形式、ツーリズム、地質

ツーリズム推進の効果を高める時、心理学者のJ.S.ブルーナーが,思考様式には論理―科学的様式と物語の様式があることを想起したい。学校教育においては前者の様式で語られることが求められ,ツーリズム推進の文脈では後者がよく取り上げられる。ところが、歴史に関するツーリズムの場合,対象が持つ物語性がビジターを引き付けるが,地層や岩石は地味でありビジターに関心を持たせるには相当な工夫が求められるといわれている。

ツーリズム推進の効果が期待できるストーリーとはどのようなものであろうか。共感を呼ぶストーリーは誰かから一方的に伝えられるものではなく,ビジター自身により心的に構成される必要があると演者は考える。例えば,物語性のある映画を見ても共感できるかどうか人により異なるのは,映像,物語言説,ストーリー全体の受容といった認知移行プロセスが関係するといわれている。

それでは、ジオパークのビジターにとって価値ある共感ストーリーとはどのようなものであろうか。例えばジオサイトにおいて視覚を通じて得られる情報,情報をもとにビジターが復元できる過去の出来事(例:ジオサイトの形成プロセス),そしてそれらをつないで描ける地域のストーリーが適切なのではないかと考えられる。このストーリーの認知移行モデルが適用できるとしても,地域のストーリー設定にあたり,次のような留意点が必要であろう。

①ストーリーの展開順に訪問地が設定されていること

②訪問地でビジターが過去の出来事を困難なく復元できること

③訪問地にないことをビジターが補完してストーリー全体を構成できること
もちろん、学校教育団体旅行にこの思考様式で展開するストーリーは不適切であり、論理―科学様式に則って構成されることが望ましい。つまり、教育旅行といわゆる観光旅行とでジオパークにおける異なるストーリー展開が必要になる場合があることに留意したい。