[MIS21-P06] 恐竜渓谷ふくい勝山ジオパークとその他地域のペルム紀-三畳紀花崗岩類と片麻岩
キーワード:恐竜渓谷ふくい勝山ジオパーク、飛騨帯
はじめに
福井県勝山市にある「恐竜渓谷ふくい勝山ジオパーク」では,多数の恐竜化石が産出する前期白亜紀の手取層群で様々な研究が行われてきた.一方で,ジオパークの西部や,福井県のその他の地域に散在する先白亜紀の岩体については,あまり研究がなされていない.これら岩体は,手取層群及び他の中生界や新生界の基盤岩であり,飛騨花崗岩類や飛騨片麻岩とみなされている(福井県,2010).しかし,これらについての記載岩石学もしくは地球年代学的研究は,柴田・内海(1992)が越前市の村国山花崗岩から,178 ± 5 Maというカリ長石K–Ar年代を報告したのみである.本研究では,花崗岩類と片麻岩について記載岩石学及び地球年代学的手法を用い,これら岩石のキャラクタリゼーションを行った.
地質概説
先白亜紀の花崗岩類と片麻岩は,飛騨帯の西部に位置する福井県の北東部(嶺北)に散在する.本研究では,以下の4つの地域の花崗岩類と片麻岩を調査した.(1) ジオパークの西部に位置する皿川-坂東島地域では,花崗岩,斑レイ岩,正片麻岩,緑色を帯びた片麻岩が露出し,上部白亜系の堆積岩及び珪長質凝灰岩や,中新世の安山岩類に覆われる.(2) 大野市の銀杏峰地域では,2つのタイプの花崗岩類が露出する:1つは銀杏峰南麓で見られる破砕されたもの,もう1つは銀杏峰北麓と銀杏峰の北に位置する宝慶寺地域で見られる非変形のものである.(3) 越前市の大平山地域では花崗岩と斑レイ岩が,(4) 村国山地域では花崗岩,閃緑岩,斑レイ岩が露出する.
研究手法と結果
花崗岩試料として,皿川-坂東島地域,銀杏峰南麓地域,宝慶寺地域,大平山地域,村国山地域から1試料ずつ,片麻岩試料として皿川-坂東島地域から1試料採取し,ジルコンU–Pb同位体年代測定と,花崗岩のモード測定を行った.ジルコンU–Pb同位体年代測定は,名古屋大学大学院環境学研究科設置のLA–ICPMSを用いた.結果を添付の表にまとめる.
考察
ジルコンU–Pb同位体年代測定の結果から,花崗岩類のジルコンの晶出は中期ペルム~前期三畳紀に起きたことが示された.このうち,村国山トーナル岩のジルコンU–Pb年代(250.9 ± 2.5 Ma)は,カリ長石のK–Ar年代(178 ± 5 Ma:柴田・内海,1992)よりも古い年代であった.これは,測定鉱物の閉鎖温度の違いに起因しており,ジルコンが形成年代により近く,カリ長石が低温の再加熱イベントの年代を示すと考える.また,坂東島片麻岩のジルコンのTh/Uがほとんど0.1未満であることから,これは変成年代とみられ,片麻岩は230 Ma頃に変成作用を受けたと考える.加えて,各試料の磁鉄鉱量から,銀杏峰地域の2つの花崗岩類と大平山地域の花崗岩類は,磁鉄鉱系列と考えられる.
引用文献
福井県,2010,福井県建設技術公社,173p/柴田・内海,1992,地質調査所月報,43,359–367.
福井県勝山市にある「恐竜渓谷ふくい勝山ジオパーク」では,多数の恐竜化石が産出する前期白亜紀の手取層群で様々な研究が行われてきた.一方で,ジオパークの西部や,福井県のその他の地域に散在する先白亜紀の岩体については,あまり研究がなされていない.これら岩体は,手取層群及び他の中生界や新生界の基盤岩であり,飛騨花崗岩類や飛騨片麻岩とみなされている(福井県,2010).しかし,これらについての記載岩石学もしくは地球年代学的研究は,柴田・内海(1992)が越前市の村国山花崗岩から,178 ± 5 Maというカリ長石K–Ar年代を報告したのみである.本研究では,花崗岩類と片麻岩について記載岩石学及び地球年代学的手法を用い,これら岩石のキャラクタリゼーションを行った.
地質概説
先白亜紀の花崗岩類と片麻岩は,飛騨帯の西部に位置する福井県の北東部(嶺北)に散在する.本研究では,以下の4つの地域の花崗岩類と片麻岩を調査した.(1) ジオパークの西部に位置する皿川-坂東島地域では,花崗岩,斑レイ岩,正片麻岩,緑色を帯びた片麻岩が露出し,上部白亜系の堆積岩及び珪長質凝灰岩や,中新世の安山岩類に覆われる.(2) 大野市の銀杏峰地域では,2つのタイプの花崗岩類が露出する:1つは銀杏峰南麓で見られる破砕されたもの,もう1つは銀杏峰北麓と銀杏峰の北に位置する宝慶寺地域で見られる非変形のものである.(3) 越前市の大平山地域では花崗岩と斑レイ岩が,(4) 村国山地域では花崗岩,閃緑岩,斑レイ岩が露出する.
研究手法と結果
花崗岩試料として,皿川-坂東島地域,銀杏峰南麓地域,宝慶寺地域,大平山地域,村国山地域から1試料ずつ,片麻岩試料として皿川-坂東島地域から1試料採取し,ジルコンU–Pb同位体年代測定と,花崗岩のモード測定を行った.ジルコンU–Pb同位体年代測定は,名古屋大学大学院環境学研究科設置のLA–ICPMSを用いた.結果を添付の表にまとめる.
考察
ジルコンU–Pb同位体年代測定の結果から,花崗岩類のジルコンの晶出は中期ペルム~前期三畳紀に起きたことが示された.このうち,村国山トーナル岩のジルコンU–Pb年代(250.9 ± 2.5 Ma)は,カリ長石のK–Ar年代(178 ± 5 Ma:柴田・内海,1992)よりも古い年代であった.これは,測定鉱物の閉鎖温度の違いに起因しており,ジルコンが形成年代により近く,カリ長石が低温の再加熱イベントの年代を示すと考える.また,坂東島片麻岩のジルコンのTh/Uがほとんど0.1未満であることから,これは変成年代とみられ,片麻岩は230 Ma頃に変成作用を受けたと考える.加えて,各試料の磁鉄鉱量から,銀杏峰地域の2つの花崗岩類と大平山地域の花崗岩類は,磁鉄鉱系列と考えられる.
引用文献
福井県,2010,福井県建設技術公社,173p/柴田・内海,1992,地質調査所月報,43,359–367.