JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24] 山の科学

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学山の環境研究センター)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科)

[MIS24-08] 飛騨山脈北部,白馬大雪渓における雪渓崩落

*吉村 亮志1奈良間 千之1 (1.新潟大学)

キーワード:白馬大雪渓、雪渓崩落、地中レーダー、UAV、応力解析

2015年秋~2016年春の冬期は,過去数十年間でも積雪の少ない年であり,長野県北安曇郡白馬村に位置する白馬大雪渓の規模は大幅に縮小した.2016年8月末には,雪渓表面に多くのクラックや陥没がみられ,歩行が困難となったため,登山シーズン中にもかかわらず,初めて大雪渓の登山道が通行止めになった.さらに,2016年9月下旬には,2号雪渓付近の雪渓底部が露出し,雪渓が上流部と下流部に分離した.以上のように,雪渓の規模が小さくなると,雪渓崩落の危険性が高まる.

雪渓崩落とは,アイストンネルが雪渓底部の河流周辺に形成され,その上部が崩落する現象である.白馬大雪渓では,雪渓が中央部で分離した2016年秋にトンネル上で多数の崩落が確認されている(畠・奈良間,2017).トンネルを構成する雪渓はブリッジと呼ばれ,両岸から橋を架けた構造のスノーブリッジ型と,雪渓本体から片側に向かって板状の庇をかけた構造の片持ち梁型に分けられる(河島ほか,2009).栗原ほか(2008)は,この2つの形状に対して応力解析をおこなった.その結果,片持ち梁型はスノーブリッジ型と比較して不安定な構造をとると指摘された.

先行研究の結果から,雪渓崩落の予測をおこなうためには,トンネルの分布とブリッジの形状を確認することが重要である.しかしながら,大雪渓底部のトンネルの大きさと位置が明らかでないため,ブリッジの形状を分類することは困難である.そこで本研究では,雪渓底部の基盤を復元することでトンネル位置を把握し,ブリッジの形状とその分布を明らかにした.さらに,雪渓崩落前の地形変化から,崩落の前兆現象および崩落メカニズムについて考察した.