JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24] 山の科学

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学山の環境研究センター)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科)

[MIS24-09] 上高地の冷気湖形成に及ぼす新雪の影響

*黒雲 勇希1佐々木 明彦2鈴木 啓助3 (1.信州大学大学院総合工学系研究科、2.国士舘大学文学部、3.信州大学理学部)

キーワード:山岳地域、冷気湖、新雪

複雑な地形を有する山岳地域では局地的な大気現象が発生しやすく,中でも冷気湖は鉛直方向,水平方向の双方の気温分布に影響を与える重要な因子である.また,積雪は地中からの熱伝達に対し絶縁層として働くのみならず,アルベドの大きな新雪は雪面上の温度上昇を妨げるなど,冷気湖の発達および維持に関わる重要な要素である.本研究では,冷気湖研究の事例が乏しい北アルプス南部の上高地を対象として,積雪期に発生する冷気湖について,気温逆転の特性およびその消長や、新雪による冷気湖への影響を明らかにすることを目的とした.

冷気湖の気温逆転の継続時間と最大逆転温度は正の相関を示し,持続時間の長い冷気湖ほど逆転の強度が強くなる傾向が見られた.冷気湖の持続時間の出現頻度分布は,短い冷気湖の出現数が最も多かった他,冬季の夜間の長さに対応する13時間前後に発生数のピークが見られた.また,少数ながらも一昼夜を超えて持続する冷気湖も観測された.冷気湖の持続時間は,直前の降雪からの時間が経過するほど短くなる傾向が見られた.これは降雪から時間が経過するほど地表の新雪が失われ,雪面のアルベドが減少することで地表が昇温しやすくなるためであると考えられる.