[MIS24-16] 上高地・上宮川谷沖積錐における巨礫群:分布,岩質および定置プロセス
キーワード:前穂高岳溶結凝灰岩、岩石なだれ、岩盤すべり、高山の地形変化、凍結風化
上高地・上宮川谷(流域面積1.54 km2; 標高1540-2931 m)を占める急峻な崖錐ー沖積錐上には,巨大な角礫の集積が認められる.踏査および地形解析・判読という屋外-野外の両研究アプローチにより,演者らは巨礫の分布,粒径および岩質を明らかにした.合計95点の巨礫(≧長径2 m)について,これらのパラメーターを取得した.分布傾向は2つに区分できる.1つは,沖積錐上方の高い急壁の直下やその周辺に集中するものである(Grp-U;図).他方は,沖積錐最下部のスムースな地表に集中して存在するものである(Grp-L).巨礫の岩質は,花崗岩と堆積岩が流域下部に存在するにもかかわらず,流域中央部から上部に広く露出する冷却節理の発達した溶結凝灰岩にほぼ限定される(優占率97%).これらの結果から,演者らは以下の仮説を持つに至った.巨礫の主たる供給域は,流域最上部にある溶結凝灰岩の岩壁である.とくにGrp-Uに分類される巨礫は,周氷河性の風化(凍結風化など)に関連した落石や短距離の転動でもたらされた.他方,Grp-Lに区分される沖積錐最下部の巨礫群は,高い運動学的移動性を伴った溶結凝灰岩の岩盤スライドや岩石なだれで移動・定置したものであり,それには沖積錐上の積雪状態が影響をおよぼしていた可能性も想定される.